抄録
本研究では、重力支配域における衝突クレータのスケーリング則について再検討を行った。これまでの重力支配域(重力が重要なスケールやレゴリス層での衝突現象)におけるスケーリング則では、ターゲットの物性や粒子の粒径は、クレータ形成過程においてその影響を無視できると仮定し、スケーリング則が確立されてきた。しかし、実際の実験データをそのスケーリング則に応用した場合、その絶対値はターゲット物性や粒径サイズによって値が変わることが指摘されている。そのため、これらのスケーリング則を実際の天体現象に応用する場合、スケーリング則から導かれる結果が、用いるターゲットのパラメータにおおきく依存するという問題が生じる。これを解決するには、粒径や物性がクレータ形成過程にどのように影響を及ぼすかを明らかにする必要がある。しかし、その基礎過程に対する理解は乏しい。これを明らかにする為に本研究では、粉体層に対する衝突クレータ実験を行った。ビデオカメラを用いて、掘削段階とトランジェント・クレータの形成段階の物理過程について調べた。これらの結果を基にして、トランジェント・クレータに対するスケーリング則について議論する。