抄録
ここ数年、Hf-Wの放射壊変を用いた年代測定法が、年代測定の新しい手法として注目されている。Hfが親石性、Wが親鉄性であり、かつ共に難揮発性の元素であることから、メタル・シリケイト分離の年代を表す時計として用いることができるためである。実際この年代測定法によって、地球のコア形成年代の推定等がいくつかのグループによってなされてきた。 しかし、メタル・シリケイト分離に大きな影響を与えたと思われる Giant Impact イベントについては、一回の Giant Impact で完全に年代がリセットされるとして議論をしている研究が多い。そこで本研究では、Giant Impact による部分的なリセットが年代測定に与える影響、特に複数回の Giant Impact が起きた場合に、いったい年代が何を表しているのか、何が制約されるのか、といった問題について検討した。また、Giant Impact によって実際に得られる平衡化の割合を見積もった。 その結果、Giant Impact の回数とその平衡化の程度が分からなければ、Hf-Wシステムを用いて地球のコア形成年代を決定することはできないこと、および実際に大きな平衡化・時計のリセットを引き起こすのは容易ではないことが分かった。特に後者については、現在の惑星形成論に対して再考を促す結果である。