日本惑星科学会秋季講演会予稿集
日本惑星科学会2003年秋季講演会予稿集
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ポスターセッション2 10/9(木)13:30~14:45
はやぶさ搭載蛍光X線分光計による太陽フレア間接観測
*山本 幸生荒井 武彦白井 慶岡田 達明加藤 學
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p. 66

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抄録

小惑星探査機はやぶさ搭載蛍光X線分光計(XRS)は比較分析用として標準試料を搭載している。標準試料と小惑星からの蛍光X線を比較することにより、入射X線である太陽X線の依存性を低減することができる[1]。
はやぶさが小惑星に到着するまでには2年以上の日数を必要とし、その間XRSは定期的に背景X線やX線天体、標準試料からのX線を観測することにより性能の経年変化を調べる。打ち上げ直後の初期運用段階である2003年5月28日から5月30日において、XRSはX線天体Sco-X1の観測を行った[2]。初期運用期間であることから、2日間という比較的長い観測時間が割り当てられた(現在は定常運用のため週3時間程度)。幸運にもこの観測期間中に非常に強いX1クラスの太陽フレアが発生した。この期間中の標準試料からの蛍光X線スペクトルはMg, Al, Siの輝線に加えてCa, Feの輝線が放出されていることを確認した。この輝線は打ち上げ後の較正データとして重要であり、エネルギー分解能や強度、また蛍光X線モデルのパラメータ決定に用いられる。
本データを用いてエネルギーのゲイン較正、地球周回衛星GOES 10とXRSのデータ比較、蛍光X線モデルと観測データの比較が行われた[3]。太陽フレア発生時のMg, Al, Si, Ca, Feの蛍光X線輝線を用いたエネルギーのゲイン較正は地上試験のそれと比べて1%以内の精度で決定した。GOES 10データとの比較では、エネルギーフラックスの時間変化は非常に似た様相を示し、XRSの観測が妥当な観測結果であることを示した。また蛍光X線モデルとの比較では、特にエネルギー範囲0.5-3 keVの領域でバックグラウンドノイズが顕著である結論となった。このことからMg, Al, SiのX線強度を決定するには、このバックグラウンドノイズとX線スペクトルを分離することが重要な課題として挙げられた。そこで本研究では主にMg, A. SiのX線強度を決定するためにバックグラウンドとX線スペクトルの分離手法について検討し、その結果について報告する。
[1] Okada, T., Fujiwara, A., Tsunemi, H., and Kitamoto, S. 2000. X-ray fluorescence spectrometer onboard MUSES-C, Adv. Space Res. 25, 345-348.
[2] Arai et al, 2003. Proc. ISAS Lunar Planet. Symp.
[3] Yamamoto et al, 2003. Proc. ISAS Lunar Planet. Symp.

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