抄録
P型小惑星は、D型小惑星と共に、炭素質隕石よりもより原始的なものとして、隕石中には見つからないものと思われてきた。最近、タギシュレーク隕石が落下し、それがD型またはT型小惑星起源らしいとわかった(Hiroi et al. 2001, Hiroi and Hasegawa 2003)。著者らの10年前の研究(Hiroi et al. 1993)から、C/G/B/F型小惑星の多くは熱変性を受けたCI/CMコンドライトに似ていると考えられ、P型小惑星は反射スペクトル特性および太陽からの動径方向分布から見てC/G/B/F型小惑星とD/T型小惑星との間にあるので、P型小惑星が熱変性を受けたCI/CMコンドライトとタギシュレーク隕石との中間的な物質でできていると考えるのは自然である。そのような隕石の存在は報告されていないが、日米の膨大な南極隕石の中に埋もれている可能性や、タギシュレーク隕石のように今後降ってくる可能性もあるはずである。
参考文献
T. Hiroi and S. Hasegawa (2003) Revisiting the search for the parent body of the Tagish Lake meteorite: Case of a T/D asteroid 308 Polyxo. Antarct. Meteorite Res. 16, 176-184.
T. Hiroi, C. M. Pieters, M. E. Zolensky, and M. E. Lipschutz (1993) Evidence of thermal metamorphism on the C, G, B, and F asteroids. Science 261, 1016-1018.
T. Hiroi, M. E. Zolensky, and C. M. Pieters (2001) The Tagish Lake meteorite: A possible sample from a D-type asteroid. Science 293, 2234-2236.