抄録
医療費削減を目的としてエビデンスベースドメディシンを理学療法に適応することは、多くの患者を失う危険性をはらんでいる。障害は治らないから障害なのであり、障害を対象とする理学療法はもともと分が悪い。障害を持った患者が、新しい自分に向き合うためにも従来のオーダーメードの理学療法サービスは守らなければいけない。しかし、一方では少子高齢化社会による医療費や介護保険費用など社会保障費の増大を防ぐことも必要である。この両者の必要を満足するのが、介護予防である。介護を必要とすることがないように、予防することができれば、従来の理学療法の枠は守られる。理学療法士は、障害の特性を理解し、介護予防における具体的な提案をする社会的な役割があるだろう。