抄録
後期高齢者を対象とした運動療法は,運動耐用能や継続性・高次脳機能面などから,効率的な実施に難渋する場合が多い。今回,後期高齢者でも認識が容易な「快刺激」に着目した。エンターテイメント性・アミューズメント性を有したゲーム機を用いた運動を実施することで,身体機能向上につながるのではないかと考えた。介護老人保健施設に入所・通所している後期高齢者27名に対し,9ヶ月間にわたり「モグラ叩き機」を使用した運動療法を実施。その実施動作上の特性を用いた反復動作を,継続的に実施することで,実施者の身体機能がどのような経時的変化を示すかを,握力・落下棒テスト(以下SFT)・ファンクショナルリーチ(以下FRT)・改訂長谷川式知能評価スケール(以下HDS-R)など14項目評価し,検討した。結果,運動を継続実施した期間は握力・SFT・FRT・モグラ叩き得点に有意な向上が認められ,運動を休止した期間は維持または低下した。モグラを叩くといった単純な反復動作の継続的な実施が,後期高齢者の身体機能の向上につながったと考える。