埼玉理学療法
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症例検討
脳幹部障害による右片麻痺の治療経験
-下肢の屈曲反射と痛みを伴うケース-
渡部 信
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キーワード: 脳血管障害, 屈曲反射, 痛み
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1995 年 3 巻 1 号 p. 43-47

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抄録
症例は橋部梗塞による右片麻痺で,背臥位で外部刺激がない状態でも屈曲反射が出現した。反射を誘発する刺激域は,下肢の表在・深部刺激はもちろん腹部まで及んでいた。それは発症からの経過の中で,痛み刺激と体幹の活動性の低さによる姿勢の異常や努力を伴う動作による全身屈曲の姿勢筋緊張の高まりとも関連して反射が形成されたと考えられる。治療では,体幹の分離運動により全身の姿勢筋緊張を整え,下肢の緊張が低下した状態で筋の感覚過敏の減少を図った。そして,屈曲反射が出現しにくい条件をつくりながら立位,歩行機能の改善へと結びつけた。これにより歩行器歩行が可能となり,痛みも軽減し自宅退院となった。今回の治療経験で,屈曲反射の出現は全身の姿勢筋緊張の強さと筋や腱の過敏性に関連があり,体幹の胸郭と骨盤の分離運動が姿勢筋緊張の調整に大きな意味をもっていることが確認できた。下肢の屈曲反射が強い場合,体幹部の治療と足部を含む下肢全体の過敏性の抑制を行いながら立位姿勢への適応性を高める必要があることを知った。
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© 1995 社団法人 埼玉県理学療法士会
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