抄録
明らかな神経症状のない高齢者63名を対象に,脳の加齢変化を頭部CTの二次元計測により定量的に評価し,直立時重心動揺との関連について検討した。その結果,大脳皮質の萎縮性変化と直立時重心動揺とに有意な関連はみられなかったが,側脳室前角周辺の白質の萎縮性変化と直立時重心動揺とが関連深いことが示唆された。また,高齢者の頭部CT上しばしば,側脳室周囲の淡い低吸収域としてみられるPVL(Periventricular lucency) 所見のあるものは,PVL所見のないものに比べ有意に重心動揺が大きいが,PVLの存在範囲の大小と直立時重心動揺との有意な関連は本研究ではみられなかった。さらに,大脳の加齢性変化は,閉眼時よりも開眼時重心動揺との関連が大きいことが示唆され,脳の加齢変化と直立姿勢制御の減退とが関連深いことがわかった。