抄録
椅子からの起立動作困難な対象への動作指導,あるいは,介助の参考に,静的平衡の基底面を与える足部に対して他の身体の部位の位置を調査した。身体運動機能に障害を認めないと判定できる男6人,女9人の計15人の椅子からの起立動作を運動計測システムで身体目標点の3次元位置と座面及び足底での荷重の推移を計測した。外果点の座標を基点に他の身体計測点の座標軸毎の距離を算出し,この時系列データから座面での垂直荷重を示す床反力成分がほぼ0となる時点(離座)の身体標点,着力点の距離を調べた。データ分析は15人より取得できた36試行の椅子からの立ち上がり動作のデータを使用した。結果は,外果を基準に腹側を正とすると矢状面内前後方向での距離は,離座時に第7頚椎棘突起 0.7±8.3 cm(平均±標準偏差,以下同様),大転子 -15.3±3.3 cm,大腿骨外側上顆 18.7±2.2 cm,第2中足骨頭 13.5±1.2 cm,着力点 7.0±2.1 cmであった。この結果のごとき構えに離座時になるように指導,介助を行うことで椅子からの起立動作が容易になると考えるが,今後臨床応用での有用性の確認,あるいは,補うべき動作内容の検討が必要であることを述べた。