日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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地域実践活動4
高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施の計画と理学療法士の役割
小泉 裕一
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p. 103

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抄録

【はじめに、目的】

神津島村は伊豆諸島の中間部に位置する人口1900人程の村である。

高齢化率は32%程で、年々高まる傾向にあり、積極的な保健事業や介護予防への取り組みを必要としている。当村では、要介護認定者の有疾患として筋骨格系疾患、循環器疾患が上位にあり、理学療法士の早期からの高齢者への関わりが期待される中、令和3年度から高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施が開始され、理学療法士が地域を担当する医療専門職として関与することとなった。今回、一体的実施における当村の計画と理学療法士の役割について報告する。

【方法】

当村の一体的実施における実施計画と、理学療法士の役割について、ポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチに分けて報告する。

【結果】

本事業は年間を通してポピュレーションアプローチとハイリスクアプローチを実施していく。ポピュレーションアプローチでは、地域の体操教室や高齢者サロン、シルバー人材センターなどの通いの場や、住民健診など高齢者が集う場で、フレイルチェック(身体機能評価、後期高齢者の質問票を使用した聞き取り)や健康相談、健康講話などを実施する。ハイリスクアプローチでは国保データベースシステムの健診結果、レセプト、またポピュレーションアプローチの関わりから事業対象者を抽出する。対象者の課題別に、低栄養防止、口腔機能低下予防、運動機能低下予防、生活習慣病重症化予防、糖尿病重症化予防、健康状態不明者の指導を実施する。理学療法士の役割は、ポピュレーションアプローチでは通いの場や住民健診で、フレイルチェックや健康相談、健康講話などを実施する。フレイルチェックでは後期高齢者の質問票を使った評価だけでなく、身体機能の評価として握力や歩行速度の測定を行い、ハイリスク者を抽出する。健康相談は健康に関する内容全般を取り扱うため、理学療法士の専門外の相談なども想定されるが、相談内容に応じて各専門職と連携し対応していく。健康講話は地域課題に応じた内容で実施する。ハイリスクアプローチは運動機能低下予防を中心に関与していく。保健指導内容としては、運動機能の評価、セルフケア指導、重症度に応じた医療機関への受診勧奨を実施していく。また、その他の予防についても保健師と協同し関与していく。

【結論】

高齢者の介護予防と保健事業の一体的実施における理学療法士の役割はまだ明確ではないが、当村ではポピュレーションアプローチ、ハイリスクアプローチのいずれにおいても中心的な役割を担う。ポピュレーションアプローチでは、フレイルチェックでハイリスク者を抽出し、ハイリスクアプローチでは評価、指導だけでなく、重症度に応じて医療機関への受診勧奨することが求められている。今後、事業を進めていき、結果についても随時報告していく。

【倫理的配慮、説明と同意】

個人が特定出来ないよう情報に配慮した。また本事業の報告にあたり、文書決裁にて所属課長の許可を得た。

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