主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 110
【はじめに、目的】
超高齢社会を迎えた本邦では,フレイルが原因で要介護状態に陥る高齢者の数は増加することが明らかとなっており,その対策は喫緊の課題となっている.基本チェックリスト(KCL)は,IADL,運動機能,栄養状態,口腔機能,閉じこもり,認知機能,うつ症状など多様な機能低下を検出し総合的に心身の脆弱性を把握することが可能な評価ツールであり,フレイルを判別する妥当性がこれまでに数多く報告されている.一方,フレイルは後期高齢者においてその該当者が多いとされているが,前期高齢者にも少なからず存在することから,フレイル対策としての介入戦略は年代別に異なる可能性が高い.本研究では,フレイル高齢者のKCL該当項目が前期高齢者と後期高齢者の間で異なるのか否かについて検討し,年代の異なるフレイル高齢者のKCL該当項目の特徴を明らかにすることを目的とした.
【方法】
対象は,平成23年~25年の3年間で長崎市が実施した「二次予防対象者把握事業」におけるKCL全戸配布において返信があった59,290名の内,KCL25項目中8項目以上に該当したフレイル高齢者10,085名(平均年齢77.4±6.8歳,男性4,178名,女性5,907名)とした.そして,男女別に対象者を前期高齢者(65~74歳)と後期高齢者(75歳以上)に分け,KCLの各項目についてカイ二乗検定を用いて比較した.
【結果】
男性における前期高齢者は1,575名(37.7%),後期高齢者は2,603名(62.3%)であり,女性における前期高齢者は1,960名(33.2%),後期高齢者は3,947名(66.8%)であった.男性においてKCL各項目を前期高齢者と後期高齢者の間で比較した結果,前期高齢者では項目5,11,21の該当割合が後期高齢者に比べ有意に高く,後期高齢者では項目1,2,6,7,10,14,16,17の該当割合が前期高齢者に比べ有意に高かった.一方,女性の前期高齢者では項目9,11,14,15,21,22,23,25の該当割合が後期高齢者に比べ有意に高く,後期高齢者では項目1,2,3,4,5,6,7,8,10,16,17,19,20の該当割合が前期高齢者に比べ有意に高かった.
【結論】
フレイルに該当した前期高齢者では,男女ともに低栄養やうつ症状に関連する項目に該当している者の割合が高くなり,加えて,男性ではIADL,女性では転倒既往や口腔機能に関連する項目の該当割合が高かった.一方,後期高齢者では男女ともにIADL,運動機能,閉じこもりに関連する項目に該当している者の割合が高くなり,加えて,男性では口腔機能,女性では認知機能に関連する項目の該当割合が高かった.したがって,フレイル対策としての介入戦略は男女ともに前期高齢者と後期高齢者で異なる可能性が示唆された.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究では長崎市が二次予防対象者把握事業で実施した自記式アンケートの匿名化された(特定の個人を識別できない)データを研究目的で二次分析しており,データの研究への活用については長崎市から承認を得ている.