日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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再発予防(運動習慣、行動変容)2
基本チェックリストを活用したCKD教育入院患者の運動機能について
益田 善光古川 和義
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p. 131

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抄録

【はじめに】

基本チェックリスト(厚生労働省)は,65歳以上を対象として心身機能の低下をスクリーニングするために実施されているもので日常生活関連動作(5項目),運動器機能(5項目),栄養状態(2項目),口腔機能(3項目),閉じこもり(2項目),認知症状(3項目),うつ症状(5 項目)に関する計25質問で構成されている。

我が国における慢性腎臓病(以下CKD)患者は約1330万人とされているのを背景に当院ではCKD教育入院を実施しており、基本チェックリストを使用してその身体的特徴を明らかにすることを本研究の目的とした。

【対象と方法】

対象は2017年10月から2021年3月までに当院腎臓内科にCKD教育入院を行った室内歩行自立レベルであるCKD患者35名とした。調査項目は基本情報として年齢、性別、入院時の情報としてフレイル有無、基本チェックリスト、血液検査データ、推定糸球体濾過量(eGFR)、BUN、CRE、身体運動機能に関する情報としてBBS、握力、SPPB、CS30,5回起立時間、歩行速度の項目についてカルテより後方視的に調査した。また、基本チェックリストの運動項目の5 に振り分け、Mann WhitneyのU検定とX2検定を用いて比較検討を行った。解析はEZR ver1.37を用いた(有意水準5%)。

【結果】

群分けの結果、運動良好群22名_63%(女性11名_50%)、運動不良群13名_37%(女性6名_46.2%)であった。群間比較の結果フレイル有無、(P<0.05)、(運動良好群/運動不良群)、年齢(76歳/76歳)、eGFR ml/min(18.8/16.6)、BUN(34/47)、CRE(2.09/3.0)、BBS(54/48)、握力_男性(31kg/21kg)、握力_女性(21kg/18kg)、SPPB(11点/9点)、5回起立時間(10.4秒/14.1秒)、歩行速度m/秒(1.19/1.64)でありフレイル有無、SPPB、歩行速度、5回立ち上がり時間、握力(男性)に有意差を認めた。

【結論】

基本チェックリストの運動項目は主に下肢機能についての質問で構成されており、運動不良群では立ち上がり動作や歩行能力に低下がみられたことから運動項目は下肢機能の低下を示唆するものと考えられた。

また、運動不良群はフレイルを有している割合が多く、下肢機能の低下がフレイル要因になっていることも考えられた。CKD教育入院患者では下肢機能の低下がフレイルに関係している可能性を考慮し、入院期間中に下肢機能を維持・向上するような生活指導を実施し、フレイル予防を行っていくことが重要ではないかと考えられた。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究は,ヘルシンキ宣言を遵守し個人情報の取り扱いに配慮し,患者の同意を得て実施した。

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