主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 21
【はじめに、目的】
2020年3月11日,世界保健機関(WHO)により新型コロナウイルス感染症(以下;COVID-19)がパンデミックと宣言されてから,多くの人々の生活様式が一変した.日本でも緊急事態宣言が発動されるなど,外出自粛が求められるようになった.この状況下で,大学生は対面での授業ができず,遠隔授業に切り替わるなど行動が大きく制約されてきた.緊急事態宣言下では,大学生の約8割が身体活動量の減少を認めたという報告もあがっており(中原ら,2021),不活動による健康への影響が大きく懸念されている.広島県では,2020年12月17日に「新型コロナ感染拡大防止集中対策」が発令され,2021年2月21日までの期間,外出自粛が要請された.しかし,実際に外出自粛要請が大学生の身体活動量や精神的健康度にどのような影響を与えていたかは不明である.そこで本研究では,外出自粛要請期間中,解除後の大学生の身体活動量および精神的健康度を調査し,実態を把握することを目的とした.
【方法】
対象は,広島大学に在学する学生のうち,アンケート調査への同意が得られた61名とした.2021年2月1日~10日,2021年4月1 日~10日の期間でそれぞれアンケートを実施した.1回目のアンケートでは,外出自粛要請期間中の1か月間(以下;期間中)について,2回目のアンケートでは,外出自粛要請が解除されてからの1か月間(以下;解除後)について調査した.調査項目は,基本情報,International Physical Activity Questionnaire-Short版(以下;IPAQ-S),WHO-5精神的健康状態表(以下;WHO-5)とし,期間中,解除後での活動量および精神的健康度を評価した.統計学的解析には,期間中と解除後の差の比較にWilcoxon符号順位検定を用いた.いずれも有意水準は5%とした.
【結果】
対象の基本情報は,年齢21.6±1.5歳,身長157.6±43.6 cm,体重53.7±17.8 kg,BMI 20.1±5.8 m2/kgであった.IPAQ-Sは,期間中;1486.2±1772.9 MET-min/week,解除後;2410.1±3738.7MET-min/weekで解除後に有意に増加していた(p<0.05).WHO-5は,16.4±5.0点,解除後;17.0±3.9点で解除後に有意な変化は認めなかった(p=0.35).
【結論】
長期間の外出制限は,身体活動量と精神的健康度を低下させることが懸念されている(Glen E, et al,2020).しかし,今回の外出自粛要請期間では,大学生の身体活動量を低下させるが,精神的健康度にまで影響を与えないことが示された.一方で,身体活動量の低下は若年者のロコモティブシンドロームのリスクを高めるため(植杉ら, 2018),外出自粛期間中も身体活動量を維持することが必要である.COVID-19流行の収束がみえない現状では,今後も外出自粛を余儀なくされる状況が頻発することが予想される.大学生の身体活動量の低下を予防するために,自宅で身体活動量を増加可能な方法を考えていくことが今後重要になってくると考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の目的および研究方法をWebページ上で文章にて十分に説明し,同意を得られた者を対象とした.なお,本研究は広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:E-2250).