主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 22
【はじめに、目的】
新型コロナウイルス感染症流行予防対策の結果,生活範囲が狭小化した.これは大学生においても同様であり,緊急事態宣言下では大学生の約8割で身体活動量が減少した(中原ら,2021).このように生活範囲が狭小化した状況下では,身体活動量を維持するために定期的な運動習慣を身につけることが求められている.広島大学では,2020年12月3日から2021年2月15日まで課外活動が禁止された.このことは,大学生の身体活動量の減少に拍車をかけることが予想される.一方で,運動部に所属しており,普段から運動習慣がある学生は自主的に運動を行い,身体活動量を維持していた可能性が考えられる.しかし,実際に運動部に所属していた者の課外活動禁止期間中の身体活動量や運動習慣は不明である.そこで本研究では,課外活動禁止期間中の大学生の身体活動量および運動習慣が,運動部の所属の有無で異なるかを調査することを目的とした.
【方法】
対象は,広島大学に在学する学生400名に募集をかけ,アンケート調査への同意が得られた188名とした(回収率:47%).2021年2月1日~2月10日の期間でGoogleフォームを用いてアンケートを実施し,課外活動禁止期間中(以下;期間中)の1ヶ月間(2021年1月1日~1月31日)について調査した.調査項目は,基本情報(年齢,身長,体重,運動部所属の有無,期間中の運動習慣の有無),International Physical Activity Questionnaire-Short版(以下;IPAQ-S)とした.運動部へ所属している大学生(以下;所属群)と所属していない大学生(以下;非所属群)の身体活動量の比較にMann Whitney U検定を用い,運動習慣の有無の比較にカイ二乗検定を用いた.有意水準は5%とした.
【結果】
対象188名の内訳は,所属群85名,非所属群103名であった.基本情報は,所属群:年齢21.2±1.6歳,身長164.8±8.2 cm,体重59.1±10.2 kg,非所属群:年齢20.9±3.6歳,身長158.8±24.0 cm,体重55.7±13.0 kg,であった.IPAQ-Sの合計点は,所属群:1795±1679 MET-min/week,非所属群:1023±1279 MET-min/weekであり,所属群で有意に高値を示した(p<0.01).期間中の運動習慣があった者は,所属群47名(55.3%),非所属群30名(29.1%)で,所属群で有意に高値を示した(p<0.01).
【結論】
所属群では,課外活動禁止以前から運動する習慣が身についており,期間中も自主的に運動できていた学生が多い結果,身体活動量が非所属群より大きかった可能性が考えられる.一方,非所属群では,もともと運動習慣がないため期間中も自主的に運動せず,日常生活のみ行っていたことから身体活動量が所属群より小さかったと予想される.WHOガイダンスでも家庭での身体活動量を維持することが推奨されていることから(WHO,2020),運動部に所属していない学生が定期的に運動できる環境を提供することが今後重要になってくる.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の目的および研究方法をWebページ上で文章にて十分に説明し,同意を得られた者を対象とした.なお,本研究は広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:E-2250).