主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 27
【はじめに、目的】
食べるためのPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)、経管栄養により栄養状態が向上し、経口摂取可能となった症例報告はあるが、中心静脈栄養による報告はほとんどない。また、臨床において入院を機に、経口摂取困難となる症例を散見する。今回、誤嚥性肺炎を繰り返し発症し、経口摂取困難となった症例に対して、皮下埋め込み式CVポートを造設し栄養管理を行い、経口摂取獲得を含むADL向上が得られたので報告する。
【方法】
独居でADL自立していた70歳代男性。急性膵炎で入院となり、改善後、入院12日後から食事開始、入院20日後より理学療法を開始した。当初、起立・歩行練習を行えていたが、その後、誤嚥性肺炎を繰り返し発症して、そのたびに経口摂取と理学療法が中止となり、入院108日後には体重8kg減少(BMIが18.9から15.7に低下)、経口摂取困難でADL全介助となった。経管栄養の導入を提案されたが、本症例が頑なに拒否し、経口摂取を強く望んだ。そのため、長期の静脈栄養が必要と判断され、入院111日後にCVポートを造設して中心静脈栄養を開始した。同時に、多職種協働として、抗重力姿勢での覚醒改善を図り、クッションや枕を使用した摂食姿勢の調整や、間接的嚥下練習を開始した。その後ペーストやゼリーでの直接的嚥下練習を併用し補助食品の追加や調整を行い、一口量制限のため小さいスプーンを使用し見守りや声かけを行った。呼吸リハビリテーションとして、腹式呼吸法や口すぼめ呼吸をして呼吸と嚥下の協調を図った。離床可能後は、起立・歩行練習を追加し1 日1時間を週6日実施した。
【結果】
理学療法開始→CVポート施行→入院147日後に療養型病院へ転院までの身体・検査所見、評価として、体重:48.3→40.3→40.8kg、握力:13→未測定→11kg、ALB:2.1→2.3→2.7g/dl、CRP:3.35→0.7→1.01mg/dl、HDS-R:11→未測定→25点、BI:15→0→75点であった。療養型病院へ転院したが、自宅復帰への住環境と社会環境調整のため当院に転院され、軟飯と刻み、水分トロミにて経口摂取で独歩可能となり、自宅退院となった。
【結論】
誤嚥性肺炎を発症する症例に対して、早期から呼吸リハビリテーションに加え、摂食嚥下練習と栄養管理を行い体重減少やADL低下を予防することが重要であると考えられる。長期的に経口摂取による必要栄養量を確保できない場合、経管栄養が優先されるべきであるが、本症例のように、経管栄養が困難な場合はCVポートによる中心静脈栄養もADL向上において、有効であると示唆される。
【倫理的配慮、説明と同意】
報告にあたり、個人情報に配慮して、本症例にヘルシンキ宣言に基づいた十分な説明を行い、同意を得た。