主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 28
【目的】
当院は呼吸リハビリテーション(以下:呼吸リハ)が主となる呼吸器専門病院である.呼吸リハのステートメントによると呼吸リハの介入時期は急性期から回復期,更には終末期まではシームレスな介入が可能であるとされている.即ち状態の変化に応じ,柔軟に介入プログラムを調整していくことが肝要と考えられる.その中で難渋する問題点として摂食嚥下障害が挙げられる.慢性閉塞性肺疾患等の慢性呼吸器疾患は吸気後の嚥下を合併することが報告され,誤嚥リスクが高いことが知られている.その様な背景からも終末期の食事は本人のニーズに沿わない形で制限されるケースも少なくない.そこで今回,嚥下理学療法の観点から医師や言語聴覚士と共同で介入し,終末期でも可能な限り安全・安楽に食事が継続出来る様に介入した為,ここに報告する.
【方式】
安静時より呼吸困難が強い慢性閉塞性肺疾患(GOLD:IV)の症例と,間質性肺炎の急性増悪により高流量経鼻カニュラ酸素療法管理となり,高濃度酸素投与が必要となった為,食事の継続の可否が問われた2例を対象とした.介入方法として実際に言語聴覚士・医師と共に摂食嚥下場面へ介入し,食事前のコンディショニング方法の検討や,食事(休憩)姿勢の調整,高流量経鼻カニュラ酸素療法におけるFlowの設定検討,その他バイタルサインを表記したモニター等の環境を活用し,休憩のタイミング指導などを実施した.
【結果】
食事前のコンディショニングや,食事(休憩)姿勢のポジショニング,モニター等の環境因子を活用した休憩タイミングの指導を行うことで,SpO2低下やPR上昇等のバイタルサインの変動が軽減した.また患者からも「この姿勢の方法なら呼吸が楽」,「食べる前に調整してもらえると飲み込みやすい」と自覚的呼吸困難の改善も図れた.
【結論】
嚥下理学療法における理学療法士の役割は多職種と連携して摂食嚥下障害・栄養障害の有無を把握し,摂食嚥下機能を阻害する因子を呼吸・姿勢・身体機能などの視点から多角的に評価した上で,状況に適したゴールを設定し,運動療法などの理学療法技術を通じて,摂食嚥下に関わる局所および全身機能・活動・参加・QOLを最大限高めることと定義されている.終末期領域における経口摂取は医学的知見と倫理的知見の間にある領域と考えられるため,上記定義を吟味しつつ,今後も他職種で介入方法検討し,患者に寄り添った介入方法を提供していきたい.
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言,人間を対象とする医学研究の倫理的原則の下,本報告を行うにあたり,対象者へ十分な説明と同意を得て実施した.