日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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健康増進・ヘルスプロモーション1
主観的実感を認識するまでに必要な身体パフォーマンステストの客観的変化量
有田 真己岩井 浩一万行 里佳
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p. 39

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抄録

【目的】

本研究の目的は、まず、運動による効果の主観的実感と身体パフォーマンステストの客観的結果との関連を定量化し、主観的実感を認識するまでに必要な身体パフォーマンステストの客観的変化量のカットオフ値を明らかにすることである。

【方式】

要支援・要介護者48名を対象に5種類の在宅筋力トレーニングを2か月間にわたり週5日実施した。身体パフォーマンステスト(開眼片脚立ち、TUG、階段昇降時間、5m最大歩行速度、FTSS)は、Pre(T1)、Post(4週後;T2)およびFollow Up(8週後;T3)の3回計測し、その変化量を解析に用いた。一方、主観的実感は身体パフォーマンステストの結果がT1と比較し、改善を実感できたかどうかについて7件法(1点かなり悪化している、7点かなり改善している)を用いて回答してもらった。客観的変化量は0を基準に悪化群と改善群に、主観的実感は4点以下を悪化群、5点以上を改善群に割り付けた。統計解析には、SPSS24.0を用いて相関係数、一致率、およびカットオフ値を算出した。有意水準は5%とした。

【結果】

主観的実感と身体パフォーマンステストの客観的変化量との相関係数を算出した結果、T2時点で有意であった項目は、開眼片脚立ち(r=0.57)、FTSS(r=-0.30)、T3時点では、TUG(r=-0.36)、階段昇降時間(r=-0.53)、FTSS(r=-0.32)であった。次に主観的実感と客観的変化量における悪化群および改善群との一致率を算出した結果、(T2/T3)、開眼片脚立ち(66.6/59.6)、TUG(52.1/63.8)、階段昇降時間(58.3/74.5)、5m最大歩行速度(62.5/54.2)、FTSS(64.6/66.0)であった。最後に、T2時点での客観的変化量の改善群のみを対象として、主観的実感の悪化群と改善群の感度・特異度からカットオフ値を算出した結果、開眼片脚立ちの項目のみ有意な差が認められ、6.04秒(AUC=0.81)であった。

【結論】

運動による効果の主観的実感と身体パフォーマンステストの客観的変化量との関連は、強い相関が認められなかった。これは、主観的実感を認識するまでに十分な身体機能の客観的変化が得られなかった可能性がある。次に、主観的実感と客観的変化量のそれぞれ改善群および悪化群との一致率は、およそ60%程度であることから、身体パフォーマンステスト項目は、主観的実感を認識させるツールとしては十分でない可能性が示唆される。本研究で唯一、主観的実感を認識するに足る評価項目は、開眼片脚立ち時間の変化量であり、主観的実感を認識するに必要な変化量は、およそ6秒であることが明らかとなった。本研究結果から、身体パフォーマンステストの客観的結果と主観的実感との齟齬の程度が明らかとなった。今後は、実感を直接的に伴うような評価指標の開発に向け、運動の動機づけとの関連を探求する必要がある。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究の実施にあたっては,事前に所属しているつくば国際大学倫理委員会より承認を得て実施した(承認番号第28-7号)。研究対象者本人への説明は申請者が実施し,研究への参加は任意であること,同意を得られない場合であっても不利益を被らないこと,参加後も自由意思により同意の撤回および中断が可能であることについて説明文書にて説明し,同意書に直筆サインをもらうことで同意とみなした。研究を開始する際,事前の健康チェックをはじめ,常備している看護師が対応できる環境を整えて実施した。得られたデータは個人名が特定できないようID番号で管理し,データへのアクセスは申請者に限った。

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