主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 38
【はじめに、目的】
脂肪組織は、脂肪細胞内に単房性の脂肪滴を含む白色脂肪組織と、多房性の脂肪滴を含む褐色脂肪組織に分類される。白色脂肪細胞は過剰エネルギーを中性脂肪として脂肪滴に貯蔵するが、褐色脂肪細胞は代謝的熱産生を介してエネルギー消費に関与するため、褐色脂肪組織の活性化はエネルギー代謝を亢進させ、肥満の予防に役立つと期待されている。肥満の褐色脂肪組織は多房性から単房性の脂肪細胞へと形態が変化し、この褐色脂肪組織の白色化はエネルギー消費を減弱させる。運動によって肥満に伴う褐色脂肪組織の白色化は改善するが、小児期の運動が褐色脂肪組織の白色化に与える影響は不明である。本研究では小児肥満に伴う褐色脂肪組織の白色化に対して、運動、及び脱トレーニングが与える影響を調べた。
【方法】
4週齢の雄性Otsuka Long-Evans Tokushima Fatty(OLETF, n = 18)ラットを肥満動物として用い、非肥満動物として同一週齢の雄性Long-Evans Tokushima Otsuka(LETO, n = 6)ラットを用いた。OLETFラットは非運動群(n = 6)と自走運動を行う運動群に区分した。OLETFラットの運動群は10週齢から12週齢の期間のみ運動を行なった群(OLETF Ex, n = 6)、及び4週齢から6週齢まで運動を行い、6週齢から12週齢まで運動を実施しない脱トレーニング期間を設けた群(OLETF DT6, n = 6)に細区分した。運動群のラットは、ランニングホイールを設置したケージで1日12時間(20:00~翌8:00)個別飼育し、自走運動を促した。12週齢の時点において、肩甲骨間の褐色脂肪組織を摘出し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色所見を用いて組織学的解析を行った。
【結果】
褐色脂肪組織の湿重量に関して、OLETFラットの非運動群はLETO ラットと比べて有意に高値であった。OLETF DT6群とOLETFラットの非運動群の間に有意差は認めなかった。OLETF Ex群はOLETFラットの非運動群と比べて有意に低値であった。褐色脂肪組織のHE染色所見において、その小葉の辺縁部では、OLETFラットはLETOラットと比較して白色化を示唆する単胞性の脂肪細胞が多く観察された。その細胞の直径は、OLETF ラット非運動群においてLETOラットと比べて有意に高値であり、OLETF DT6群はOLETFラット非運動群と比べて有意に低く、OLETF Ex群はOLETFラットの非運動群、及びOLETF DT6群と比べて有意に低値であった。
【結論】
小児期の運動は褐色脂肪組織の組織学的な白色化を抑制するが、脱トレーニング期間によってその持ち越し効果は減弱することが明らかになった。
【倫理的配慮、説明と同意】
全ての実験は広島大学における動物実験に関する指針に従い、動物実験委員会の承認を受けた上で実施した(A19-163)。