主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 60
【目的】
近隣地域における産業理学療法分野での関わりを見据え,当院の人間ドッグ・健診を利用する就労者を通し,疼痛の実態・産業分野でのPTの需要について明らかにすることを目的としてアンケート調査を実施したので報告する.
【方法】
対象は当院を健診・人間ドッグで利用する就労者で,本研究に同意の得られた804名(男性565名女性239名)とした.対象者の年代は10代2名、20代4名、30代166名、40代281名、50代281名、60代101名.職種は教育研究業184名,製造業142名,官公署135名,商業75名,保健衛生業63名,接客娯楽業47名,建設業38名,運輸業30名,その他90名であった.
調査項目は(1)基礎情報(年代・性別・職種)(2)生活要因{平均睡眠時間・運動習慣(月間の運動日数)・ストレスの程度(NRS)}(3)仕事内容(残業時間・通勤時間)(4)疼痛詳細{疼痛の有無・疼痛部位(身体部位を10箇所に分けた中から複数選択可)・疼痛を感じる動作(自由記載)疼痛の程度(NRS)}(5)希望(PT派遣・運動器健診)とした.(1)・(4)~(5)は選択式とした.疼痛群と非疼痛群に分けて,(2)・(3)を対応のないt検定を用いて比較検討した.統計的有意水準を5%未満とした.
【結果】
仕事中に疼痛を感じる人は378名,感じない人は426名であった.疼痛群の疼痛部位は腰部232名(NRS5.2±1.7)肩194名(NRS5.2±1.6)頚部167名(NRS5.1±1.6)の順であった.
疼痛群と非疼痛群を比較検討した結果,ストレス(疼痛群5.2±2.1,非疼痛群4.1±2.2)睡眠時間(疼痛群6.1±0.7、非疼痛群6.3±0.8)運動習慣(疼痛群4.8±7.0、非疼痛群5.9±6.8)に有意差が認められた(P<0.05).その他の要因について有意差は認められなかった.
企業へPTの派遣を希望する人は143名(18%),運動器健診を受けてみたいと回答した人は467名(58%)であった.
【結論】
疼痛部位については,厚生労働省の公表する「国民生活基礎調査の概要」での腰痛・肩こりの有訴者率が高いとする報告に類似した傾向にあることが確認された.疼痛の有無とストレスの程度・運動習慣・睡眠時間との関係性があることが示唆され,業務上の動作や労働環境だけでなく心因的要素・生活習慣にも着目する必要性があると考えられた.
運動器健診を受けてみたいと回答した人は半数以上おり,自身の運動器機能について興味を持っている人が多いことが伺えた.企業へのPTの派遣希望については,PTの企業での活動が一般的ではない現状で,18%が希望しており,今後近隣企業にて具体的に関われる可能性があると考えられた.
今後,今回の結果の発信,そして企業での関り・運動器健診導入について検討していきたいと考えている.
【倫理的配慮、説明と同意】
本研究は院内倫理委員会にて承諾を得るとともに,ヘルシンキ宣言に則り研究の目的・内容を書面にて説明し,同意が得られた者を対象者とした.