主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 63
【はじめに】
厚生労働省が公表する「業務上疾病発生状況等調査」によると,腰痛による労災申請は様々な職種の中で医療,介護職が多く,災害性腰痛発生件数は保健衛生業が第1位で,年々その数は増えている.オーストラリアでは腰痛の正しい知識を普及させることで医療費が15%軽減したとの報告がある.国内では腰痛予防対策の勉強会に参加した者の腰痛有訴率は,有意に低かった先行研究もある.当院では昨年度より職員の腰痛予防や労働環境改善のため,腰痛の実態を把握するアンケート調査やメディカルチェックを実施,院内外で研究発表等に取り組んできた.今年度,院内医療安全対策委員会より依頼を受け,理学療法士が委員会に参画,講師として全職員に教育,普及する機会を得た.産業理学療法の観点から,職業性腰痛のリスクマネジメント,腰痛の予防と減少,健康管理,安全で働きやすい職場を作ることを目的にした活動内容を報告する.
【活動報告】
対象は病院内の全職種,全職員246名.方法は新型コロナウイルス感染対策のため動画配信視聴形式とした.院長,副院長等と医療安全対策委員25名に対し40分間,講義と実技を実施.その様子を動画撮影,録画したものを各部署で全職員に配信した.視聴終了後に各部署より質問を受け後日回答を用紙にて配布,閲覧できるようにした.講義と実技の内容は腰痛の危険因子,健康管理,作業環境管理や労働時間を含めた作業管理,心理社会的要因,労働衛生教育,体操やストレッチの実技指導.日本理学療法士協会の研修用資料も活用した.
【統括】
各部署の質問内容はストレッチや疼痛のセルフケアについてが6 件,介助方法についてが1件,環境整備やコルセット着用等についてが3件.良かった点は産業理学療法の視点で関わることができたこと.動画視聴形式がコロナ対策にも貢献できたこと.対面での開催時よりも多くの質問がもらえたこと.反省点としてリアルタイムでやりとりできない難しさや自己管理が可能な腰痛かどうかの判断を他職種に伝える難しさを感じた.今後は個々の部署や職種の業務特性に最適化した教育を検討したい.リスクマネジメントとしては職業性腰痛予防対策の情報や知識の習得,意識の改革を行い,始業前後や業務の合間の体操やストレッチの重要性の再認識や教育,普及の実践ができた.今年度は職員が主体的に取り組めるように腰痛予防ポスターを作成している.腰痛減少のための行動変容へつなげ習慣化できることが重要であり,さらなる教育体制の構築と普及,啓発を継続していく必要がある.
【まとめ】
医療安全対策委員会の活動に理学療法士が参画できたことで,個人から組織全体に対して腰痛のリスクマネジメントが実践,可能となった.今後も委員会と連携,協働して腰痛予防,安全で働きやすい職場環境の形成,健康経営推進のための活動を継続していきたい.
【倫理的配慮、説明と同意】
今回の活動報告においては開示すべきCOIはありません.個人情報の取り扱いに注意し,倫理的配慮に留意しました.