日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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産業その他
診療放射線技師における作業関連性筋骨格系障害の実態調査
明日 徹小野 俊朗
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p. 62

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抄録

【はじめに、目的】

作業関連性筋骨格系障害(WMSD)は様々な職種で報告されている。診療放射線技師は、多岐にわたる業務内容、重症化する患者への対応(介助量増大)、放射線防護のために鉛放射線防護衣(防護衣)を装着するなど、心身に大きな負荷がかかり、医療専門職の中では、WMSDの可能性が大きいと予想されるが、その実態調査はほとんどない。本研究は、診療放射線技師のWMSDの実態を調査し、理学療法士(PT)によるWMSDの予防や改善の可能性を探ることを目的とする。

【方法】

岡山県診療放射線技師会理事会の承認のもとに、県内の診療放射線技師に対して郵送方式あるいはインターネットによる調査を実施した。調査期間は2021年2~4月の間で、調査項目は、過去1年間のWMSDの有無(最も疼痛が強い部位)、業務状況に関する内容(防護衣装着状況、患者の介助状況など)、その他、日常の運動習慣の有無、業務実施前・中・後の体操実施状況、ワークライフバランスの満足度(5段階リッカート尺度)、社会心理的質問項目(WOAQ:点数が高いほど良好と判定;合計140点)とした。WMSDの有無により2群に分類し、各調査項目の比較をt-検定、Mann-Whitney U検定、χ二乗検定で行った。統計解析にはSPSS Ver.27を用い、有意水準はすべて5%未満とした。

【結果】

県内会員735名中、113名から回答を得た(回答率15.4%)。WMSD を有する者は61名(54.0%)で、内訳は腰部38名(62.3%)、肩部7名(11.5%)、頸部・膝部各5名(各8.2%)、手と手指4名(6.6%)、その他2名(3.2%)であった。WMSDの有無による2群間の比較で有意差が認められた項目は、防護衣着用時間(p=0.027)、ワークライフバランスの満足度(p=0.020)、WOAQの得点(有;86.7±14.2点 vs 無;94.2±13.6点;p=0.005)であった。業務前・後の体操実施で、両群間に差がある傾向を示した(前;p=0.079,後;p=0.052)。

【結論】

診療放射線技師のWMSDの実態調査を行った結果、約半数の診療放射線技師がWMSDを有しており、特に腰痛を訴えているものが多かった。防護衣の長時間装着により重量負荷が蓄積したことが、腰痛の発生に影響したと推測された。ワークライフバランスの満足度、WOAQの得点の結果から、心理的側面の影響も示唆された。業務前・後の体操実施状況に差がある傾向がみられたことからも、WMSD対策にPTが効果的に介入する余地はあると考えられた。本研究結果より、診療放射線技師に対するPTによる腰痛予防対策が必要と思われた。

【倫理的配慮、説明と同意】

アンケート実施にあたり、文書にて研究の趣旨等を説明し、回答によって同意とした。また、本研究は本学倫理審査委員会により承認を得て実施した(第0023号)。

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