日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第8回 日本予防理学療法学会学術大会
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地域実践活動2
地域在住高齢者における社会参加状況の変化と抑うつ発生の関連:COVID-19流行期間中の縦断研究
野口 泰司林 尊弘窪 優太冨山 直輝越智 亮林 浩之
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キーワード: COVID-19, 抑うつ, 社会参加
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p. 72

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抄録

【はじめに、目的】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、その感染力の高さから外出の自粛や社会活動の制限など人々の社会生活に大きな影響を及ぼしている。特に、地域の通いの場等の制限をはじめとした高齢者の社会参加機会の減少は、抑うつなどのメンタルヘルスを低下させる可能性がある。しかし、COVID-19流行期間での社会参加の減少が、抑うつに及ぼす影響についての縦断研究による実証報告は限られる。そこで本研究では、COVID-19流行期間における縦断データを用いて、地域在住高齢者における社会参加状況の変化と抑うつ発生との関連性を検討した。

【方式】

研究デザインは縦断研究とした。対象者は、地域在住の一般高齢者または公的介護保険制度における要支援認定を受けている高齢者からランダムに抽出され、2020年3月のベースラインおよび10月のフォローアップの郵送調査の両方への回答者1106人のうち、ベースライン時において認知症を有する者、抑うつを有する者を除外した597人とした。抑うつは二質問法(Spitzer, JAMA 1994)により評価され、1ヶ月間の抑うつ気分、意欲低下のいずれかに該当した場合を「抑うつあり」とした。社会参加は、ボランティアグループ、スポーツ関係のグループ、趣味関係のグループ、学習・教養サークル、介護予防のための通いの場、老人クラブの6つのグループのいずれかに月1回以上の参加がない場合を「参加なし」とし、ベースライン時およびフォローアップ時の参加状況から「継続して参加あり」、「参加減少」、「参加増加」、「継続して参加なし」の4群に分けた。統計解析は、欠損値は多重代入法により補完し、目的変数をフォローアップ時の抑うつの発生、説明変数を社会参加状況の変化、調整変数をベースライン時の年齢、性別、独居、学歴、経済状況、ADL、疾病、運動機能、認知機能、外出頻度、社会的ネットワークとして、ロバスト分散によるポアソン回帰分析を行い、抑うつの発生率比(IRR)および95%信頼区間(CI)を推定した。

【結果】

対象者の平均年齢(SD)は、79.8(4.7)歳であり、50.4%が女性であった。社会参加がない者は、ベースライン時は35.5%であったが、フォローアップ時は47.1%であった。観察期間中にて21.8%に抑うつが発生した。多変量解析の結果、「継続して参加あり」と比べて、「参加減少」は抑うつ発生と有意に関連した(参加減少:IRR=1.59、95%CI=1.01-2.50、p=0.045;参加増加:IRR=0.84、95%CI=0.28-2.55、p=0.757;継続して参加なし:IRR=1.29、95%CI=0.86-1.95、p=0.224)。

【結論】

COVID-19流行期間における社会参加の減少は抑うつ発生と関連した。感染症流行下にて社会参加機会が減少した高齢者のメンタルヘルス低下が懸念される。感染対策に十分配慮した上での通いの場の再開や、多様な手段での社会的繋がりの維持が、高齢者の抑うつに対する予防理学療法として重要である。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究は、国立長寿医療研究センターおよび星城大学の倫理・利益相反委員会の承認のもと実施した。調査票には研究の説明書を添付し、回答をもって同意とみなした。本研究はヘルシンキ宣言を遵守して実施した。

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