主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第4回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第56回 日本理学療法学術大会
会議名: 第8回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: Web開催
開催日: 2021/11/13
p. 90
【はじめに,目的】
当院では脂質異常症・高血圧症・糖尿病を主病とする生活習慣病患者に対し,減量や体質改善,健康維持・増進を目的に,マシントレーニングと温泉プールによる水中運動療法を提供している.本活動を行う中で,4種目のマシントレーニングの効果をより高めるために,マシントレーニング中の20~30分程度の待ち時間を有効活用し,坐位で行える低負荷運動を追加することとした.低負荷運動を追加したことでマシントレーニングの効果が促進されたかを,体組成計を用いて筋肉量の変化を中心に比較検証した.
【方法】
待ち時間である20~30分程度の時間に,坐位で行える低負荷運動を実施した.低負荷運動の内容は,坐位で行える自重トレーニングを4種類とセラバンドトレーニングを8種類実施した.解析対象は,当院生活習慣病外来に通院している13名(男性2名,女性11名,平均年齢71.2±10.6歳)で,体組成計(InBody370)を使用し四肢・体幹の筋肉量を測定した.検証期間は,低負荷運動を行わなかったA 期間と低負荷運動を追加したB期間をそれぞれ6ヶ月間と定め,A期間終了後にB期間に移行した.この結果をもとにMann-WhitneyのU検定を行い,有意水準を5%とした.
【結果】
左下肢筋肉量の中央値(25,75パーセンタイル)は-0.10(-0.33,0.12)から0.02(0.00,0.23)と有意な改善(p=0.035)を認めた.また,右下肢筋肉量は-0.18(-0.37,0.11)から0.04(0.00,0.24)有意差(p=0.095)を認めなかったが,改善傾向がみられた.上肢・体幹に関しては有意な改善は認めず,筋肉量は維持されていた.
【結論】
トレーニングの合間もただ休憩するのではなく,話ができる程度の低負荷でリズミカルな運動を行うことは,全身の血流改善や代謝向上,疲労回復に効果があると言われている.これにより,今回待ち時間に低負荷運動を実施したことが,マシントレーニング効果の促進に繋がり下肢筋肉量増加に有効であったと示唆された.低負荷運動の内容は,上下肢・体幹部それぞれの部位に対して活動性が得られるように設定したが,下肢筋肉量のみ有意な差を認めた.このことは,今後さらに検討し全身的な筋肉量の改善が見込めるよう内容を見直す必要があると考える.また,今回の取り組みでは単に運動負荷や拘束時間を増やすのではなく,「待ち時間を有効活用した」という点が特徴であった.坐位での低負荷運動を待ち時間に追加したことは,精神的な負担を与えずにモチベーションを維持しながら運動を継続的に行うことに繋がり,トレーニングの質の向上に寄与したと考える.
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,対象者へ書面及び口頭にて説明し,同意を得た.