日本透析医学会雑誌
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症例報告
腹膜透析導入を選択した骨髄不全症候群合併の腎不全患者2症例
小林 さつき倉林 和隆加家壁 健小磯 博美田村 茂生内藤 美幸若松 良二植木 嘉衛
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2008 年 41 巻 2 号 p. 139-143

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抄録
骨髄異形成症候群(myelodysplatic syndrome;MDS)を始めとする骨髄不全症候群(bone marrow failure syndrome)は,人口の高齢化に伴い患者数が増加している疾患群である.透析導入患者も年々高齢化していることより,今後,血液疾患合併の透析療法導入患者が増加することが予想される.血小板や白血球の減少,機能異常に伴う出血傾向や易感染性などのリスクが懸念されるが,腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)を選択し,継続した2例について報告する.PDカテーテル挿入術の際,事前の血小板輸血にて出血予防は可能であった.PD導入後,尿毒症や体液バランスが改善し,赤血球輸血の投与間隔延長効果が認められた.また,それに伴い患者の意欲や活動性の回復も得ることができた.血液透析(hemodialysis:HD)のように血管の穿刺や抗凝固製剤の必要がないPD療法は,血小板低値の出血傾向のある患者でも,輸血や造血促進因子製剤との併用で,継続可能と思われる.また,腹膜炎の危険を未然に防ぎ,PDを長期に継続できるよう,清潔操作の指導は,より重要と考えられる.一般に血液疾患は生命予後不良な疾患群であり,在宅で施行可能なPDは,患者のQOL改善の可能性も示唆される.
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© 2008 一般社団法人 日本透析医学会
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