日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
会議情報

予防指定演題
コロナ禍における生活変化はフレイルに影響するか?-後期高齢者を対象とした質問紙による検討-
滝本 幸治池田 耕二笹野 弘美辻下 聡馬椿根 純子小枩 宜子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 10

詳細
抄録

【はじめに、目的】

コロナ禍が人々の健康や生活に及ぼす影響は大きい。例えば、山間地域より都市部で活動量などの影響が大きいという報告があり(Yamada Y, et al. 2021年)、特に高齢者の健康に及ぼす影響などが懸念される。本研究では、高齢化が進む山間地域の後期高齢者を対象に、コロナ禍における生活変化がフレイルに影響しているか質問紙にて調査したので報告する。

【方法】

奈良県曽爾村で実施されたフレイル健診(後期高齢者の質問票)の対象となる後期高齢者(75歳以上)に対して、自記式質問紙調査を実施した。同村は、四方を山に囲まれた山間地域に位置し、人口1,295人、高齢化率51.6%(2020年国勢調査)いう特徴を有する。対象者に対して、以下の質問紙調査を行った。コロナ禍によって生じた生活変化について、Shinoharaら(2019)の質問票(Questionnaire for change of life; QCL)を参考に活用した。QCLは、過去1年のコロナ禍における生活変化を5つの質問(毎日の移動量/脚の筋力/食事量/心配・不安/交流機会)で問い、リッカート形式(5段階)で回答を求めた。また、Frailty Screening Index(FSI)を実施し、対象者をフレイル/プレフレイル/頑強に判別した。他の質問紙として、フレイル健診として使用される後期高齢者の質問票(15問、得点化して使用)、多剤併用(6剤以上)を聴取し、住民基礎健診における基本情報(年齢・性別、BMI)と照合した。統計解析は、コロナ禍による生活変化がフレイル判定(FSI)や後期高齢者の質問票の回答に反映しているか検討するため、目的変数をFSI結果、あるいは後期高齢者の質問票(点)とし、説明変数をQCLとした多変量解析を実施した。共変量には、年齢、性別、BMI、多剤併用有無を投入し調整した。有意水準は5%とした。

【結果】

住民基礎健診を受診した後期高齢者77名が回答し、回答欠損等のない58名(平均80.9±4.0歳、女性26名)を解析対象とした。FSIを目的変数とした順序ロジスティック回帰分析の結果、回帰式は有意であり、共変量で調整後も毎日の移動量(β=-0.31)、脚の筋力(β=-0.30)に関する回答がフレイル判定と関連した。後期高齢者の質問票(点)を目的変数とした重回帰分析の結果は、回帰式は有意であり、共変量で調整後も脚の筋力(β=-0.34)と食事量(β=-0.32)が後期高齢者の質問票と関連した。

【結論】

コロナ禍における生活の変化が、フレイル判定や後期高齢者の質問票の結果と関連していることが分かった。質問紙且つ小サンプルの調査結果ではあるが、山間地域に在住の後期高齢者では、コロナ禍での生活変化が虚弱な状態への移行に関連している可能性が示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、ヘルシンキ宣言を遵守し、奈良学園大学研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:3-010)。また、対象者には研究依頼書に基づき、本研究の目的・意義および方法はじめ、対象者の利益・不利益、個人情報保護について説明を行った。そのうえで、理解と同意が得られた場合、研究協力同意書に署名を得たうえで調査を実施した。

著者関連情報
© 2022 日本予防理学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top