日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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予防指定演題
積雪寒冷地で高い身体活動量を保つための因子について -地域在住女性高齢者における1年間のコホート研究-
工藤 健太郎川口 徹新岡 大和吉田 司秀子遠藤 陽季佐野 春奈
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p. 11

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抄録

【はじめに,目的】

筆者ら(2022)は,積雪寒冷地における地域在住高齢者を対象とした横断的調査から,積雪期の高い身体活動量には雪かきの実施,低い抑うつ度,高い移動能力が関連することを報告した。高齢者において年間を通して身体活動量を高く維持することは重要であると考えられるが,複数の先行研究は積雪寒冷地では気候状況の影響を受けるため身体活動量を高く維持することが難しいことを報告した。本研究では,高齢者が年間を通して身体活動量を高く保つための因子を検討することを目的とした。

【方法】

データ収集期間は積雪期(2021年1-2月)と非積雪期(2021年8-9月)であった。

対象は青森県青森市で介護予防を目的として自主グループ活動を行う地域在住女性高齢者52名(年齢73.8±5.3歳)とした。追跡率は78.7%であった。

基本属性は性別,年齢,BMI,同居家族,運動習慣,雪かき実施の有無等を調査した。身体活動量は3軸加速度計により3METs以上の中高強度身体活動時間(Total MVPA),積雪期と非積雪期におけるTotal MVPAの変化率を算出した。運動機能は,2ステップテストを用い2ステップ値を算出した。抑うつ度はGDS-S-15,生活機能はJST-IC,ヘルスリテラシーはHLS-EU-Q47,QOLはSF-8のPCS(身体的スコア)とMCS(精神的スコア)を算出した。

年間を通して高い身体活動量を維持している者を「Total MVPA変化率が25.0%以下,および積雪期および非積雪期の双方においてTotal MVPAの中央値以上」という基準で抽出し,High PA群とした。該当しなかった者をLow PA群とした。各変数について群間比較を行った。解析にはIBM SPSS version27.0 を用い,統計学的有意水準を5%とした。

【結果】

High PA群は20名(38.5%),Low PA群は32名(61.5%)であった。基本属性については,High PA群がLow PA群と比較してBMIが有意に低く,運動習慣有りの者の割合が有意に高かった。その他,年齢,同居家族,雪かき実施等については有意な群間差はなかった。Total MVPAについては,High PA群において積雪期で75.6±26.6分/日,非積雪期で61.7±18.2分/日であり,Low PA群において積雪期で32.0±14.8分/日,非積雪期で35.9±27.2分/日であった。また,2ステップ値についてはHigh PA群で1.35±0.12,Low PA群で1.24±0.16とHigh PA群で有意に高かった。さらに,SF-8のPCS についてHigh PA群で53.9±4.5点,Low PA群で45.8±7.8点とHigh PA群で有意に高かった。GDS-S-15,JST-IC,HLS-EU-Q47については有意な群間差を認めなかった。

【結論】

積雪寒冷地の地域在住女性高齢者において,年間を通して身体活動量を高く維持するための因子として,運動習慣,高い移動能力,高い身体的側面のQOLが重要であった。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は青森県立保健大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号21029)。

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