主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 20
【はじめに、目的】
5回立ち上がりテスト(SS-5)は簡便に測定でき広く用いられている.また,サルコペニア診断における身体機能テストの項目になっている.ただし,椅子の高さと身長の影響をうけるため,そのままの数値は身体機能を十分に反映しない可能性がある.
SS-5から下肢関節パワーを算出する方法が考案されている(Alcazar ら,2018).地域在住の健常高齢者を対象として算出した下肢関節パワーは,四肢骨格筋指数(SMI)や歩行速度と相関が高いという報告がある.しかし,この値はなんらかの活動制限を有する対象者に対して検証されていない.
そこで本研究の目的は,通所リハビリテーション(以下,通所リハ)の利用者に対して,SS-5から算出した下肢関節パワー(以下,下肢関節パワー)はSS-5と比較し,SMIやその他の身体機能と関連するか,また,転倒既往の有無によって下肢関節パワーに差があるか調査することとした.
【方法】
研究デザイン:横断研究
対象は単一施設の通所リハを利用している者.歩行が要介助,立ち上がり不可もしくは上肢支持が必要,心臓ペースメーカーがある者は除外した.
対象者の一般及び医療情報を診療録より取得した.身体機能の計測は握力,5m歩行,SS-5を実施した.5m歩行時間から歩行速度を算出した.SMIは生体電気インピーダンス法によって計測した骨格筋量から算出した.下肢関節パワーの算出はAlcazarらの方法を使用した.また,過去一年間の転倒歴(以下,転倒歴)について情報を得た.
統計解析は各データ間の相関関係をピアソンの積率相関係数にて算出した.また,転倒歴有無による下肢関節パワーの群間差についてMann–WhitneyのU検定を実施した.
【結果】
対象者は34名(男性12名,女性22名),平均年齢82.3歳,介護度の内訳は要支援1: 19名,要支援2: 9名,要介護1: 4名,要介護2: 2名であった.各身体機能データはSS-5平均12.1秒,歩行速度平均1.07m/s,下肢関節パワー平均152.4Wであった.
下肢関節パワーと各データ間の相関係数はSMI 0.47,歩行速度0.57,握力0.69であった.SS-5と各データ間の相関係数はSMI0.02,歩行速度-0.44,握力-0.22であった.
転倒歴は有12名,無22名であった.群間の下肢関節パワーに有意な差はなかった.
【結論】
通所リハ利用者という集団を対象に,SS-5から算出した下肢関節パワーと身体機能の関係を調査した.その結果,下肢関節パワーはSMIと弱い相関,歩行速度と握力と中等度の相関があった.一方,SS-5とSMIにはほぼ相関がなかった.このことから下肢関節パワーは筋量を反映するデータとなると考える.
転倒歴の有無での下肢関節パワーの差はなかった.これは転倒に多要因が関与しているためと考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき対象者には研究について文書と口頭にて説明し,書面にて同意を得た.