主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 19
【はじめに、目的】
腰痛は世界的に有訴者率が高く、健康寿命の短縮に大きく寄与している症状の一つである。高齢者では、肥満の状態が腰痛に及ぼす影響に異質性が存在する可能性があるがまだ明らかになっていない。本研究は、肥満状態の変化が腰痛リスクに及ぼす影響を調べるとともに、筋力による肥満状態の変化の腰痛リスクへの影響の異質性を検証した。
【方法】
本研究は50歳以上の成人を対象とした英国のEnglish Longitudinal Study of Ageingのwave 4(2008–2009年)、6(2012–2013年)、および7(2014–2015年)を用いた縦断研究である。3時点すべての調査の対象となった8,643名のうち、1)ベースラインでデータ欠損者(n = 1,043)、2)wave 6および7データ欠損者(n = 732)を除外した、計6,868名を分析対象とした。アウトカムはwave 7におけるNumerical Rating Scale 5点以上の腰痛の有無とした。曝露はBody Mass Index(BMI)の連続値とし、wave 4および6のデータをそれぞれ用いた。共変量はwave 4における性別・年齢・人種・学歴・等価所得・婚姻状態・慢性疾患/関節炎・握力・軽/中/重強度の運動習慣・うつ症状・腰痛の有無とした。さらに時変共変量としてwave6における年齢・等価所得・慢性疾患/関節炎・握力・軽/中/重強度の運動習慣・うつ症状・腰痛の有無を用いた。解析にはtargeted maximum likelihood estimationを用い、wave 4および6における5%–25%の仮想的なBMIの減少/増加を包含する10通りのシナリオのもとで、BMIの変化の腰痛の有訴への影響を推定し、実際の観察データと比較しRelative Risk(RR)を算出した。また、ベースライン時(wave 4)の握力による層別解析も行った。
【結果】
仮想的な減少シナリオでは、wave 4と6でBMIが10%減少した場合、実際の観察データと比較して腰痛リスクが有意に低かった[RR(95%信頼区間) = 0.82(0.73-0.92)]。仮想的な増加シナリオでは、wave 4と6におけるBMIの5%増加は、実際の観察データと比較して、腰痛リスクが有意に高かった[RR(95%信頼区間)=1.11(1.04-1.19)]。さらに、握力が英国国民平均値の50パーセンタイル未満の者において、BMIの上昇と腰痛リスクの増大との間に用量反応関係が観察されたが、50パーセンタイル以上の者においては認められなかった。一方、BMIの低下による腰痛リスク低減効果の大きさは、握力が50パーセンタイル以上の者でより大きかった。
【結論】
本研究により、腰痛に対する筋力の強さに応じた積極的な体重管理介入の重要性が示された。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、National Health Service Research Ethics Committees under the National Research and Ethics Serviceの承認を受けて行われた。全ての回答者よりインフォームド・コンセントが得られている。