主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 30
【はじめに、目的】
本邦では高齢化率の増加に伴い要介護者が増加している.腰痛や膝痛などの痛みは要介護の要因であることが報告されている.腰椎変性疾患に対する手術は,痛みやADL改善に有効であるが,術後に腰痛が発生する症例も少なく無い.要介護を予防するうえで,腰痛に着目した介入が必要であると考える.腰痛には健康に必要な情報を入手し,活用するための能力であるヘルスリテラシーが関連すると報告されている.しかし,腰椎変性疾患術後の腰痛とヘルスリテラシーの関連についての報告は散見されない.ヘルスリテラシーの理解や活用の中で,どの過程が術後の腰痛と関連するかが明らかになれば,腰痛予防に向けた治療展開に役立てられると考える.本研究の目的は腰椎変性疾患術後患者の腰痛とヘルスリテラシーの関連を下位項目を含めて調査することである.
【方法】
研究デザインは横断研究とした.対象は腰椎変性疾患に対して,後方除圧術,腰椎椎体間固定術,または,矯正固定術を施行され,術後3ヶ月以上,2年未満経過した者とした.除外基準は,再手術,腫瘍,感染,外傷に対する手術,神経筋疾患,脊椎疾患以外の骨・関節疾患の既往,重篤な内部障害,認知機能障害を有する者とした.評価項目は腰痛(Visual Analogue Scale:VAS),ヘルスリテラシーの評価法(European Health Literacy Survey Questionnaire47:HLS-EU-Q47),患者基本情報(年齢,性別,BMI,術式),Charlson Comorbidity Index,精神疾患の有無とした.調査方法は,郵送法にて実施した.腰痛群を先行研究よりVASが30mm以上の者と定義した.統計解析は,腰痛群に関連する要因を単変量ロジスティック回帰分析にて抽出した後(有意水準20%),それらを独立変数とした多変量ロジスティック回帰分析(stepwise)にて抽出した(有意水準5%).次に,ヘルスリテラシーの下位項目を独立変数とした多変量ロジスティック回帰分析(stepwise)を行った.
【結果】
175名にアンケートを送付し,返送が可能であった86名(女性46名,平均年齢±標準偏差67.9±11.7歳)を対象とした(回収率49.1%).単変量解析の結果,HLS-EU-Q47,BMI,術式,精神疾患の有無が抽出された.多変量解析の結果,腰痛に関連する要因として,HLS-EU-Q47(p=<0.01,OR=0.90),BMI(p=0.04,OR=1.14) が抽出された.ヘルスリテラシーの下位項目を独立変数とした多変量解析の結果,ヘルスリテラシーの「活用項目」(p<0.01,OR=0.90)が抽出された.
【結論】
腰椎変性疾患術後の腰痛には,ヘルスリテラシーが関連することが示された.また,ヘルスリテラシーの下位項目においては「活用項目」が関連していた.これは,健康行動を行えている者が腰痛を制御できていると考えられる.この結果から,身体活動やホームエクササイズを促す際に,取り組みやすい目標を設定や行動理由の動機付けを図ることが大切であると考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,苑田会倫理審査委員会の承認(承認番号第135号)を得た後,対象者へ研究の目的,方法,参加者に起こり得る不利益と対応,個人情報の取り扱い,参加の任意性と撤回の自由,情報公表の方法について説明した書面を郵送資料に同封し,アンケートの返送をもって同意とした.