主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 39
【はじめに,目的】
フレイルの進展には,社会的孤立といった社会的側面が影響する(Jarach CM, 2021).一方,社会のデジタル化が進む中,高齢者への健康増進として情報通信技術(ICT)機器を活用することが期待されている.しかし,社会的孤立に該当する高齢者において,ICT 機器の利用がフレイル予防に寄与するかは明らかではない.本研究の目的は,地域在住高齢者におけるフレイルとICT機器利用との関連について,社会的孤立の有無別に検討することとした.
【方法】
対象は,アンケート調査への協力が得られた地域在住高齢者のうち,要支援・要介護認定を受けておらず,データ欠損がない者とした.フレイル判定には基本チェックリスト(25項目)を用い,4項目以上に該当した場合を“プレフレイル”,8項目以上の場合を“フレイル”とした(Satake S, 2017).ICT機器利用は,情報通信端末(PC,スマートフォン,携帯電話,タブレット端末)によるメッセージ,サイト・アプリの利用状況(有無)を調査した.社会的孤立は,Lubben Social Network Scale-6において,12/30点未満の者を“孤立あり”とした(Lubben J, 2006).
統計解析は全て,社会的孤立の有無別に行った.フレイルとICT機器利用との関連について,Cochran-Armitage検定,順序ロジスティック回帰分析を用いて検証した.本解析における従属変数はフレイル(1=ロバスト,2=プレフレイル,3=フレイル),独立変数はICT機器利用の有無,調整変数は年齢,性別,Body Mass Index,病歴数,暮らし向きとした.
【結果】
解析対象者は451名(76.6±6.2歳,女性59.8%,社会的孤立あり38.5%)であった.社会的孤立なし群/あり群におけるフレイル該当者(率)は,プレフレイル103名(36.7%)/59名(34.7%),フレイル56名(19.9%)/56名(32.9%)であった.同様に,ICT機器利用がある者(率)は,225名(80.1%)/126名(74.1%)であった.社会的孤立あり群では,単変量解析においてフレイルとICT機器利用との有意な関連がみられ(p=0.020),多変量解析ではICT機器を利用することがフレイルに対して保護的に関連する傾向を認めた(OR=0.55,95%CI:0.28-1.09,p=0.087).一方,社会的孤立なし群では,フレイルとICT機器利用との関連はみられなかった.
【結論】
社会的孤立に該当する地域在住高齢者において,ICT機器の利用はフレイルに対する保護因子である可能性が示唆された.デジタル社会において高齢者間の情報格差が課題であるが,フレイルが進展するリスクがより高い社会的孤立に該当する高齢者では,情報格差の解消がより重要であると考えられた.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号2021-026).また,研究対象者に対しては, アンケート用紙への回答と返信を以て研究参加への同意とすることを文書にて説明し,文書はアンケート用紙の配布に併せて配布した.