主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 38
【はじめに、目的】
ご利用者の身体的重度化が進む当園に介護リフト(以下リフト)を導入して1年後の職員の腰部負担の変化について調査したので報告する。
【方法】
対象は令和2年2月から令和3年2月にみわ翠光園高齢者寮に在籍していた職員で協力の同意を得られた男女14名(30~70歳、平均54.4±10.7歳)。方法は令和2年2月と令和3年2月に疾患特定・患者立脚型慢性腰痛症患者機能評価尺度(以下JLEQ)を用いて腰痛の程度に関する調査を行い、対応のあるt検定を用いて有意水準5%で解析を行った。また令和3年2月には独自に考案したアンケートも同時に実施した。
【結果】
JLEQは、1回目平均22.5±25.4点、2回目平均22.4±17.3点で有 意差を認めなかった(P=0.981)。2回目の調査で点数が減少したのは1回目に腰痛ありの5名と腰痛なしの1名(減少幅は平均18±13.6点)。2回目に点数が増加したのは1回目に腰痛ありの2名と腰痛なしの4名(増加幅17.7±13.6点)。1回目と2回目で点数に変化がなかったのは1回目腰痛なしの2名であった。アンケートの結果は、リフト導入による腰部負担の変化については14名(100%)が負担が減ったと回答。1年間の腰痛の有無については、腰痛なし1名(7.1%)、腰痛あり13名(92.9%)であった。1年間で腰痛のあった13名については、リフト使用による腰痛の変化において、腰痛が消失した2名(15.4%)、腰痛は消えないが痛みは楽になった11名(84.6%)であった。腰痛発生場所については勤務中6名(46.1%)、勤務中とプライベートの両方4名(30.8%)、どちらとも言えない3名(23.1%)であった。今後のリフトの必要性については、14名(100%)が絶対に必要と回答した。勤務中の腰痛発生原因(複数回答)としては、更衣・排泄などのベッド上介助7件、軽介助レベルの方の立ち上がり介助、リフトによるトイレ排泄介助中の下衣介助、入浴介助、洗い物等の立ち仕事が各1件であった。
【結論】
1年間のリフト使用によって100%(14名)が負担が減ったと回答したことは、リフトの腰痛軽減効果を示すが、JLEQ点数で有意差がなかったのは点数の減少と同等の点数の増加があったことが原因で、アンケートから勤務中の移乗介助以外の腰部負担の強い介助や状況によってプライベートでの腰痛の発生が挙げられた。ただ、リフトの使用によって腰痛は消えないが痛みは楽になったと11名(84.6%)が回答したように、リフトは腰部の負担が少なく業務の遂行を可能とすると考えられ、どのような状況で発生するか分からない腰痛に対して、腰痛があったとしても負担の少ない勤務を可能とすると考えられる。反面、腰部負担の強い介助業務について、介助方法や介助姿勢などの指導の重要性が改めて示唆された。
【倫理的配慮、説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には本研究の目的、方法、個人情報の取り扱い等について書面、及び口頭にて説明し、書面にて同意を得た。