主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 49
【はじめに、目的】
整形外科的な手術を受けた者は、一般高齢者よりもサルコペニアの有病率が高いと報告されている。人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:以下、THA)の術後アウトカムとサルコペニアとの関連を明らかにしたエビデンスは十分でない。THAの術後アウトカムとサルコペニアとの関連が明らかになれば、サルコペニアを予防する取り組みの価値をより一層高めるとともに、術後リハビリテーションの戦略を立てるときに役立つ情報になると考える。本研究の目的は、THA患者を対象に、サルコペニアの有病率とサルコペニアと術後アウトカムとの関連を明らかにすることとした。
【方法】
研究デザインは、後ろ向きコホートスタディとした。対象は、当院にて末期変形性股関節症によりTHAを受けた者142名とした。除外基準は、脳血管疾患による後遺症がある者、手術既往がある者とした。測定項目は、体組成データと握力、日本語版準WOMACの疼痛項目(WOMAC-P)と身体機能項目(WOMAC-F)とした。体 組成データと握力は術前に測定し、アジア・サルコペニア・ワー キンググループのカットオフ値を基に、低筋力なし・低骨格筋量 なし(標準群)、低筋力あり・低骨格筋量なし(低筋力あり群)、 低筋力あり・低骨格筋量あり(サルコペニア群)の3群に分類した。WOMAC-PとWOMAC-Fは、術前、術後3か月・6か月に測定し、0 点(最も悪い状態)から100点(最も良い状態)で採点した。さらに、筋力を必要とする下位項目である「階段を昇る」、「階段を降りる」、「重労働をする」に対する困難感の平均値と標準偏差を算出した。統計解析は、記述統計を用いて標準・低筋力あり・サルコペニアの3群の有病率を算出した。WOMAC-PとWOMAC-F、下位項目の点数は、一般線形モデルを用いて、時期ごとに3群で比較した。
【結果】
対象は、標準群85名(59.8%)、低筋力あり群54名(38.0%)、サルコペニア群3名(0.2%)であった。WOMAC-Pは全ての時期で有意な群間差はなかった。WOMAC-Fの平均値は、標準群・低筋力あり群・サルコペニア群の順に、術前では52.3・56.6・41.6点、術後3 か月では86.75・89.5・41.0点、術後6か月では87.5・91.8・59.0点であり、術後3・6か月でサルコペニア群が他の群よりも有意に低値であった。「階段を昇る」、「階段を降りる」、「重労働をする」の困難感は、術後3・6か月でサルコペニア群が他の群よりも有意に困難を感じていた。
【結論】
THA患者のうちサルコペニアを呈する者は、先行研究では33.3% と報告されているが、本研究では0.2%と非常に少なかった。サルコペニア群は、標準群と低筋力あり群に比べて、術後に日常生活動作で困難を感じやすいことが明らかになった。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則って進められた。本研究は後ろ向き研究のため、事前に説明と同意を取得することは困難であった。代わりに、対象者向けに文書を公開し、研究参加に対して拒否する機会を設けた。