日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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地域実践活動
住民主体の通いの場に対する、理学療法士の支援実践 ~活動困難となったグループに対して~
保田 直宏江口 悟
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p. 94

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抄録

【はじめに、目的】

2006年から介護予防事業が開始され、住民主体の通いの場の重要性が年々高まっている。それから15年以上が経過し、長期継続しているグループでもメンバーやリーダーの高齢化、虚弱化により、活動困難となり消滅するケースが多くみられる。

また介護予防事業に理学療法士(以下PT)が、身体評価や体操指導で関わる報告は多くみられるが、活動困難となったグループを立て直しから支援した報告は少ない。今回当院PTが活動困難となったグループに対し、立て直しを図ったため報告し、考察する。

【方法】

対象は、15年前から週1回、1時間、体操とレクを行う住民主体の自主活動グループである。参加者は6名(男性1名、女性5名)。年齢70歳以上。2名のリーダーが高齢化で離脱し活動困難となったため、当院PTが支援する事とした。

①意見交換会②活動見学③講話、体操指導の順に介入した。

①でニーズ調査を行い、②で活動状況と、体操の課題を捉えた。①で分かったニーズは、正確な体操を行う事と、長期的な活動の継続であった。②で見えた課題は、運動の頻度、強度、持続時間、種類等が決まっていない事であった。

①②を踏まえ、③は15分を運動、栄養、転倒予防等の講話とレク、45分を体操指導の時間とした。運動の種類の変更は極力避け、今 まで実施してきた体操をパンフレットで、解剖学、運動学的に説 明した。介入回数は、月3回から開始し、徐々に月1回へ減らしていった。

その1年後、無記名式質問調査を実施し、満足度、体操効果、人数を増やしたいかを調査した。

【結果】

体操のパンフレットを作成し、解剖学、運動学的に説明する事で運動方法を正しく理解し、メンバー同士で修正を促す事が出来る様になり、毎回同一の体操が可能となった。その結果、リーダーが不在でも活動継続が可能となり、PT介入は月1回となった。

アンケート調査は、満足度(とても満足4、満足2、不満0、とても不満0)、体操効果(とても感じる0、少し感じる5、わからない1、全く感じない0)、人数を増やしたいか(たくさん増やしたい0、少し増やしたい4、どちらでもよい2、増やしたくない0)、という結果となった。

【結論】

自主活動グループに対し、従来の体操や雰囲気を残しニーズに沿った支援を行う事で、満足度を上げる事が出来た。これは、長期継続してきたメンバーの心理的背景に配慮した事が要因であったと考えられる。

リーダーの高齢化や虚弱化で活動困難となったグループに対し、活動を継続させる一般的な方法として、新リーダーを養成する事が考えられる。しかし特定のリーダーを養成する事は、個人の役割が増大し、重圧を感じる事も少なくない。

少人数グループの場合は、PTがグループの特徴を捉え、全員に解剖学、運動学的に体操を説明する事等により、体操リーダー個人の役割を平準化させ、通いの場における活動を継続させる支援が出来ると考えられる。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言の理念に基づき、対象者に対して発表の主旨や個人を特定できないよう配慮することを口頭で説明し同意を得た。

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