主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合
共催: 第5回 日本産業理学療法研究会学術大会, 第7回 日本栄養・嚥下理学療法研究会学術大会, 第57回 日本理学療法学術大会
会議名: 第9回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 赤羽会館(東京都)
開催日: 2022/11/19 - 2022/11/20
p. 93
【はじめに、目的】
Functional Reach Test(以下FRT)は立位で上肢を可能な限り前方へリーチさせるバランスの評価法であり、リハビリテーションの現場で広く使用されている。しかし、FRTの計測にはヤードスティックの固定や専用の計測機器を設置するスペースが必要であり、在宅や病棟など限られた場面での計測が困難である。先行研究ではFRTをより簡便に計測する方法として指示棒を用いての計測(以下指示棒法)が提案されており、若年者および高齢者における妥当性が示されている。また、更に簡便な計測方法としてレーザー距離計を用いての方法(以下レーザー距離計法)も提案されている。レーザー距離計法の妥当性は若年者で検討されており、高齢者での検討が必要であると考えられた本研究では、健常高齢者におけるレーザー距離計法の妥当性と各計測方法の計測値の差について検討することを目的とした。
【方法】
対象は、65歳以上の健常高齢者24名(男性7名、女性17名、年齢71.5±8.4歳)とした。基本姿勢は立位で両足間を肩幅とし、右上 肢を90°挙上した状態から可能な限り前方へリーチするよう説明した。計測機器法では、第3指先端に計測器が触れるように調整し、リーチ後検者が目視でメモリを読み計測した。指示棒法では最長に伸ばした指示棒を右手で把持してもらい、指示棒の先端を壁に押し付けながらリーチした後、検者が短縮した指示棒の長さをメジャーで計測し、差し引いた長さを計測値とした。レーザー距離 計法では壁にレーザーを照射し、リーチした状態で再度照射ボタンを押してもらい機械上でリーチ距離を算出し計測値とした。1人の対象者につき各計測方法で3回ずつ計測し、中央値を採用した。妥当性はPearsonの積率相関係数を用いて検討した。また、各計 測方法の計測値の差は反復測定の分散分析を行い、事後検定としてBonferroni法を行った。統計処理はIBM SPSS Statistics Ver27を使用し、有意水準は5%未満とした。
【結果】
レーザー距離計法と指示棒法で中等度の正の相関(r=0.483, p<0.05)がみられたが、計測機器法と指示棒法、計測機器法とレーザー距離計法では有意な相関はみられなかった。各計測方法による計測値を比較すると、レーザー距離計法による計測値は計測機器法と指示棒法に比べて有意に小さかった(p<0.01)。レーザー距離計法ではリーチとボタン操作の二重課題が要求される点や、リーチする上肢が支持物に触れておらずlight-touchが起こらない点で他の計測方法よりも難易度が高く、計測値が有意に短くなったと考えられる。レーザー距離計のボタン操作をより簡便にする等二重課題を軽減することで、高齢者におけるレーザー距離計法の妥当性が高くなると考えられた。
【結論】
レーザー距離計法と計測機器法には有意な相関がみられず、健常高齢者におけるレーザー距離計法の妥当性は低かった。また、レーザー距離計法の計測値は、計測機器法と指示棒法に比べて有意に短かった。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は、青森県立保健大学研究倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号21025)。2021年7月上旬から中旬にかけて地域で介護予防活動を行う自主グループに対して協力を依頼し、参加意思のある者に対して、説明資料にある選択と任意性、また途中で中止しても不利益のないこと、また収集したデータを今後学会発表や論文化に用いることを口頭および書面にて説明し、書面にて同意を得た。