日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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地域実践活動
墨田区高齢者身体能力測定会によるフレイル・サルコペニアのスクリーニングの実際
山川 諒太平野 正仁伊藤 丈仁
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p. 97

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抄録

【はじめに、目的】

厚生労働省は在宅で自立した高齢者の増加を目指している.我々は東京都墨田区から運営を委託され,令和2年と令和3年に高齢者身体能力測定会(以下,本事業)を16回開催した.なお本事業は東京都理学療法士協会地域包括ケアシステム推進委員会「市区町村の受託事業」の一環である.本事業の目的は,区や地域包括支援センターが高リスク者を把握すること,および高齢者自身が機能低下や低栄養等の可能性を把握し,介護予防・フレイル予防に対する行動変容を促すことである.今回,本事業がフレイル,サルコペニアの高リスク者をスクリーニングできたのか検討した.

【方法】

本研究の対象は墨田区報や墨田区ホームページから申し込んだ区内在住高齢者279名とした.本事業は令和2年,令和3年に墨田区内の会場で計16回開催した.本事業は各回理学療法士5名,ボランティアの介護予防サポーター4名,区の担当者1名,および各圏域の地域包括支援センター職員1名で運営した.本事業は①身体能力測定,②理学療法士によるフレイルを予防する生活習慣についての講話,③個別の結果フィードバックと生活相談の三部構成で行った.①は身長,体重,BMI;Body Mass Index,SMI;Skeletal Mass Index,握力,5m通常歩行速度,および片脚立位保持時間を測定した.②は「フレイル予防の生活習慣」と題し,運動習慣,食習慣,社会参加習慣がフレイル予防につながる旨を理学療法士が伝えた.③は測定結果を理学療法士が個別に参加者と振り返り,生活状況を聴取し適宜通いの場への参加を促した.プレフレイルとフレイルに該当した者は,地域包括職員に繋いだ.結果からJ-CHS に則り参加者をロバスト群,プレフレイル群,フレイル群に分けた.さらに握力,歩行速度,SMIの結果から,AWGS2019に則り参加者をサルコペニア群と非サルコペニア群に分けた.解析にはt 検定とFisherの正確確率検定を用いた.

【結果】

参加者は男性60名,女性219名,平均年齢75.1±5.6歳だった.ロバスト群は164名,プレフレイル群は73名,フレイル群は14名だった.サルコペニア群は12名,非サルコペニア群は266名だった.男性サルコペニア群は非サルコペニア群よりも握力が低値だった.男女ともサルコペニア群では非サルコペニア群よりもフレイル,プレフレイルに相当する者の割合が有意に高かった.

【結論】

本事業はフレイル・サルコペニアをスクリーニングする機能を果たすことができ,高齢化率の高い地域や自治体において有効な事業である.

【謝辞】

本事業にご協力いただきました阿部勉様,伊藤晃洋様,上海隆志様,川島亜希子様,佐々木貴彦様,嶋田浩平様,高橋勇希様,舟越智之様,三好このみ様,山口野花様,吉澤光瑠様に心より感謝致します.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は,令和2年度と令和3年度に実施した墨田区高齢者身体能力測定会のデータを使用した.ヘルシンキ宣言に基づき,墨田区高齢者身体能力測定会の実施時,測定データは個人が特定できない形で公開する場合があること,関連学会で発表する場合があることを参加者に書面にて説明し,書面にて同意を得た.データの使用については墨田区の承認を得た.演題発表については東京都リハビリテーション病院倫理審査委員会の承認を得た.

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