日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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地域実践活動
地域在住中高齢における太極拳運動が身体機能に及ぼす影響
劉 振中原 雅美森田 正治
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キーワード: 太極拳, 太極功夫扇, 熟練度
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p. 99

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抄録

【はじめに,目的】

本研究は太極拳サークル(以下,サークル)に所属している地域在住中高齢者を対象に,2種類の太極拳運動の介入効果を熟練度別に検討することを目的とした.

【方法】

対象はサークルに所属している地域在住中高齢女性18名とした.対象者の年齢は61.6±6.1歳,身長は154.4±7.5cm,体重は52.3±5.5kg,BMIは22.0±2.7kg/m2(いずれも平均±標準偏差)であった.対象者は,サークル活動の経験年数により,1年未満の初心者群が9名,3年以上の熟練者群が8名であった.介入はサークルにおいて太極拳及び太極功夫扇の指導を週1回(毎回90分間)受講し,受講した内容を各自週2回以上,家庭で練習することとした.介入期間は3ヶ月間とした.運動機能測定は初回と最終回に2回行った.測定項目は,体組成(InBody270),筋力(握力),柔軟性(長座体前屈テスト),静的バランス(開眼片脚立位検査),動的バランス(TUG)とした.統計学的解析は,統計ソフトIBM SPSS Statistics 25を使用した.初心者群と熟練者群の属性の比較には,対応のないt検定で実施した.初心者群と熟練者群のそれぞれ介入前後の比較に対応のあるt検定を用いた.有意水準は5%とした.

【結果】

介入前の初心者群と熟練者群の比較では,2群間の属性(年齢,身長,体重,BMI)に統計的有意差は認めなかった.長座体前屈距離では,初心者群の介入前(36.9±11.2cm)より,介入後(46.7±8.7cm)が有意に向上した(p<0.01).熟練者群の介入前(37.4±7.4cm)より,介入後(45.9±7.7cm)は,有意に向上した(p<0.01).片足立位時間では,初心者群の介入前(89.0±39.9秒)より,介入後(117.9±6.4秒)は,有意に向上した(p<0.05).熟練者群においては,介入前(102.3±33.4cm)より,介入後(113.4±18.6cm)は,平均値は向上したが,有意差は認めなかった.その他の項目は,初心者群及び熟練者群ともに介入前後の比較で有意差は認めなかった.

【結論】

太極拳運動は熟練度に関わらず,柔軟性の向上に効果的な運動であることが示唆された.熟練者群の静的バランスや動的バランスは有意差を認めなかったが,天井効果が影響していると考える.本研究の結果,太極拳運動を介入とした先行研究を支持するものであった.

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者にはヘルシンキ宣言に従い,本研究の目的と概要を十分に説明し,個人情報の保護,研究中止の自由が記載された説明文を用いて説明し,書面にて同意を得ている.なお,本研究は国際医療福祉大学倫理審査委員会の承認を得てから実施した(承認番号:18-Ifh-084).

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