日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YP-04-2
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予防ポスター4(転倒)
回復期リハビリテーション病棟患者における退院後の転倒の実態と関連要因の検討
髙橋 祥子藤田 貴昭笠原 龍一西山 和貴佐藤 秋博木皿 悠太神保 良平山本 優一
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抄録

【目的】

高齢者や脳血管疾患患者では病院退院後に転倒リスクが高くなることが報告されており (Naseri et al, 2018; Foster et al. 1995),大腿骨近位部骨折患者でも再骨折リスクが高いことが知られている (Hagino et al. 2012).回復期リハビリテーション病棟の入院患者は高齢者や脳卒中患者,大腿骨近位部骨折患者が多くの割合を占めるため,同病棟患者の退院後の転倒予防は非常に重要であると考えられる.しかし,回復期リハビリテーション病棟入院患者の退院後の転倒の実態はほとんど明らかになっていない.本研究では回復期リハビリテーション病棟を退院した患者の自宅退院後の転倒に関する調査を行い,どの程度の転倒が生じているのかを明らかにするのと同時に転倒に関わる因子を検討することを目的とした.

【方法】

対象は2021年10月から2023年1月の間に当院回復期リハビリテーション病棟から自宅に退院した患者で,退院時に歩行が可能 (介助歩行を含む)であった者とした.入院前の転倒歴,退院時の心身機能と生活機能 (BBS,HDS-R,VI,FIM),退院3ヶ月後の転倒状況 (7項目),動作遂行状況 (自宅での生活状況) (10項目),転倒恐怖感 (10項目)を調査した.なお退院後の調査は自記式調査票を郵送して行った.各項目について転倒した者 (転倒群)と転倒しなかった者 (非転倒群)の間で群間比較を行った.有意水準は5%未満とした.

【結果】

83名が対象者として登録されたが,調査票が未返送または記入ミスのあった者を除いた65名が解析対象となった.65名のうち,退院後3ヵ月以内に自宅で1回以上転倒した者は16名 (18.2%)であった.転倒場所は寝室が最も多く (6名),次いで屋外が多かった (4名).転倒群は非転倒群と比較して脳血管疾患患者の割合が有意に大きかった (p<0.05).退院時の心身機能および生活機能で有意差を認めたのはFIMとVIの項目で,いずれも転倒群が有意に低値であった.また転倒群は非転倒群と比較して,動作遂行状況に関する5項目,転倒恐怖感に関する1項目が有意に低値であった.

【考察】

本研究から,転倒者と非転倒者の間でバランスや認知機能は有意な差がないものの,疾患や退院時の意欲とADL自立度に相違がある傾向が示唆された.また退院後の動作遂行状況にも差が認められ,これらの知見は転倒しやすい対象者の検出に役立つ可能性がある.

【倫理的配慮】

本研究は,北福島医療センター倫理委員会の承認 (受付番号 101)を得て実施した.また,参加者全員から文章によるインフォームドコンセントを得た.

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