日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YP-16-1
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予防ポスター16(運動器)
当院職員に対する腰痛対策事業が腰痛の予防ならびに改善におよぼす影響
篠原 晶子有福 浩二坂本 淳哉
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抄録

【はじめに】

医療施設における職員の腰痛有訴率は増加傾向に あるとされており,当院も同様の問題が生じている.この腰痛の原因として,腰部を屈曲位に保った状態での動作や長時間の座位姿勢が指摘され,その対策として腰椎伸展運動の教育と実践が有用といわれている。そこで今回,当院における腰痛対策事業として施設職員に対する腰椎伸展運動の教育と実践を行い,腰痛の発生ならびに改善に及ぼす影響について検討した。

【方法と対象】

対象は,衛生委員会と当科が共同開催した研修を受講し,介入前後の評価が可能であった240名とした。なお,安静時痛や下肢症状がある者,鎮痛剤内服者は対象から除外した.研修は当院の全職種を対象として3分間のWEB動画の視聴 により行った。内容は,1)腰痛発生のメカニズム,2)適切な動作および姿勢の指導,3)腰椎伸展運動の方法,とした。なお,腰椎伸展運動は腰部屈曲動作後や座位が2時間以上続いた後に2回実施することを個別に指導した。評価項目は,痛みの強さ (VAS),腰椎屈曲時の床指間距離 (FFD),腰椎伸展時の床 C7間距離 (HFD)とし,研修前および研修受講2か月後に測定した。そして,研修前後の腰痛有訴者率,研修後の運動実施率,研修前後の痛みの強さと身体機能の変化を検討した。また,研修後の新規腰痛発生率,腰痛改善者率を算出した。統計学的解析にはwilcoxonの符号順位和検定を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

腰痛有訴者率は,研修前は54.1% (130名),研修後は 36.2% (87名)であった。研修後の運動実施率は,81.4%であった。研修前に腰痛を有する者のVASの平均値は3.8±2.1であり,研修後は2.0±2.3と有意に低値を示した。FFDは,研修前は-4.4±11.0,研修後は-4.7±11.8であり,研修前後で有意差を認めなかった.HFDは,研修前は126.3±9.3cm,研修後は 125.6±7.5㎝であり,研修後は有意に低値を示した。また,新規腰痛予防率は87.3%,腰痛改善率は43.7%であった.

【考察】

今回の結果,腰椎伸展運動の実施率は81.5%と高く,短時間の教育でも簡単に行える伸展運動は運動継続に有効であったといえる。そして,腰痛予防効果は高く,また,腰痛有訴者に対しても痛みの軽減効果と腰椎伸展動作の改善が得られることが示唆された。しかし,腰椎伸展運動の実施が腰痛の発生予防や改善に直接的に関与しているかは明らでなく,運動の実施回数の影響など今後検討を進める予定である。

【倫理的配慮】

本研究は当院の倫理委員会の承認を得た (承認番号:第2023-1号)。また、対象者に対して書面にて研究参加に関する同意を得て行った。

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