日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YP-27-2
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予防ポスター27(予防未来)
地域在住高齢者における立ち上がり能力に影響する骨格筋機能指標
武田 晃一國枝 洋太林 祐介小山 真吾河村 康平佐藤 和命森沢 知之高橋 哲也羽鳥 浩三藤原 俊之
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抄録

【目的】

地域在住高齢者において,立ち上がり能力の低下(5回立ち上がりテスト,5STS≧10秒)は,障害発生を予測する有用な評価指標である(Makizako H, et al. 2016).この立ち上がり能力には下肢筋力が影響するが,下肢以外の筋力や骨格筋量を含めた影響因子は十分に検討されていない.そこで,地域在住高齢者の立ち上がり能力に影響する種々の筋力や体組成との関連を検討することを目的とした.

【方法】

対象者は日常生活が自立した65歳以上の地域在住高齢者562名 (男性92名,女性470名,年齢77.6±5.9歳)とした.立ち上がり 能力の評価は5STSを採用した.その他に,年齢,性別,等尺 性膝伸展筋力,握力,呼吸機能測定器(IOP-01)を用いた最大吸気筋力,マルチ周波数体組成計を用いた骨格筋指数(SMI), Phase Angleを評価した.なお, 最大吸気筋力は,年齢と性別から算出される予測値に対する割合(%MIP)を解析値とした.統計解析として,立ち上がり能力低下に影響する因子を検討するために,従属変数を立ち上がり能力低下(5STS≧10秒と定義)とし,独立変数を年齢,%MIP,握力,膝伸展筋力,SMIおよびPhase Angleとしたロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行なった.なお,統計学的有意水準は5%とした.

【結果】

5STSの結果,10秒以上が70名,10秒未満が492名であった. ロジスティック回帰分析の結果,立ち上がり能力低下の有意な影響因子は,年齢(オッズ比:1.06,95%信頼区間:1.01-1.11),吸気筋力低下(%MIP<70と定義,オッズ比:2.45,95%信頼区間:1.45-4.16)および膝伸展筋力低下(男性<52.6Nm,女性 <49.2Nmと定義,オッズ比:2.20,95%信頼区間:1.27-3.82) であった.C統計量は0.718であった.

【考察】

地域在住高齢者において,立ち上がり能力低下には,膝伸展筋 力と吸気筋力の低下が有意な影響因子であった.この結果から,立ち上がり能力には, SMIやPhase Angleではなく,筋力が直接 的に影響すると考える.また,先行研究が支持する膝伸展筋力以外に,本研究では吸気筋力低下も影響因子として抽出された.サルコペニアの診断基準に該当しない地域在住高齢者においても,吸気筋力低下の合併率は高いと報告されている.そのため,吸気筋力低下は地域在住高齢者の身体機能低下をより鋭敏に反映している可能性があり,今後更なる調査が必要と考える.

【結論】

地域在住高齢者の立ち上がり能力の低下には,膝伸展筋力と吸気筋力の低下が影響した.

【倫理的配慮】

本研究はヘルシンキ宣言に則って実施し,本研究は順天堂大学医学部医学系研究等倫理委員会の承認を得た (G20-0016).参加者には口頭で研究の概要を説明し,書面による同意を得た上で実施した.

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