主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第58回 日本理学療法学術大会
共催: 第6回 日本産業理学療法研究会学術大会
会議名: 第10回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 函館市民会館・函館アリーナ(函館市)
開催日: 2023/10/28 - 2023/10/29
【はじめに】
超高齢社会における健康づくりが社会的課題である.高齢化率は2022年は29.1%であり,2040年には35.3%, 85歳以上人口は1,024万人と予測される.あわせて15-64歳の生産年齢人口は2040年までに20%(約1,200万人)減少する.85歳以上の要介護認定率は現状で57.8%である.すなわち,あと 17年間で要介護高齢者は急増する一方,ケアや支援する人財は急減する.使えるコストも減少傾向にある. 要介護リスクを高め,日常生活機能を低下させる主要因は歩行機能の低下である.歩行機能が低下する高齢者は,①下肢筋力低下,②バランス機能低下,③外反母趾等の足部変形,④巻き爪などの足爪異常,⑤転倒骨折リスクが挙げられる. 積極的な歩行機能の維持・向上の支援には足部の健康を守る必要がある.しかし,足部はほとんど観察されておらず,効果的な支援も行われていない.
【方法】
本研究では,転倒予防を目指し様々な装置を開発してきた.一例としてスマートフォンを用いた足部骨格3D計測を実現した.精度は1.7mm,角度は0.1°であり,扁平足や外反母趾リスクの評価を行えるシステムを開発した. 本システムを用いて592名(64.3±11.9歳)の足部骨格の特徴量を計測した.着目点は,舟状骨高,舟状骨の横方向のずれ,足部骨格のずれ,横アーチ幅と高さ,拇趾先端-第1中足骨頭-踵(拇指角)等である.
【結果・考察】
成果の一例として,変形性膝関節症(膝OA)や膝 の痛みがある対象者は,舟状骨の横方向のずれ,足部骨格のずれが大きいことが明らかになった.拇指角は舟状骨高に加えて,舟状骨の横方向のずれ,横アーチ幅とも関連があった. 舟状骨の横方向のずれは第1足根中足関節(第1TMT関節)の不安定性を引き起こし,さらに,横アーチの扁平化(開張足)は第1中足骨頭の回転を誘発することの2つの要因が外反母趾の発生リスクを高める可能性が推察された.
【結論】
スマートフォンによる足部骨格3D計測は,外反母趾や膝OAのリスク予測を実現でき,効果的な健康支援,リハビリの実践により予防の実践につながる可能性がある.さらに,地域で経時的な計測が簡便に実施できるため,運動指導の効果を見える化できると考えられる.現状・今後の大人数の支援が必要な高齢者に対し,少人数の専門職が健康づくりに寄与するスキームが求められる.
【倫理的配慮】
東都大学の研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号R0309)