日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YOS-15-2
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予防OS15
血中ポリフェノールの再現性と結腸がんリスクとの関連について: JPHC研究の結果より
森 渚
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抄録

【背景】

食事中のポリフェノール摂取量と大腸がんリスクの関連を検討した疫学的研究では、食事アセスメント関連の測定誤差などの影響から、ほぼ関連なしであると報告されている。また、多くの前向きコホート研究では、通常1回の血液サンプルで血中ポリフェノール濃度が測定されることから、血中ポリフェノールの再現性を検討した研究は少ない。本研究は、35種類の血中ポリフェノール濃度の再現性を検討し、血中ポリフェノール濃度と結腸がんリスクとの関連について検討することを目的として行った。

【方法】

まず、JPHC-NEXTの妥当性研究のデータを用い、1年 間隔で収集した血液を用いて35種類の血中ポリフェノール濃度を測定し、各ポリフェノールについて級内相関係数を算出した。次に、JPHC研究の5年後調査時に収集した血液を用い、コホート内症例対照研究を実施した。結腸がん症例群375人とコントロール群710人において、血中ポリフェノール濃度を測定した。条件付きロジスティック回帰モデルを用い、オッズ比と95%信頼区間を算出した。

【結果】

お茶に多く含まれる、エンテロジオール (0.79)および 没食子酸 (0.77)、ケルセチン (0.66)、エピガロカテキン (0.61)、ケンペロール (0.55)、また、主にコーヒーに多く含まれるカフェ酸 (0.55)、フェルラ酸 (0.53)についても級内相関係数が比較的高かった。コホート内症例対照研究では、ジヒドロカフェ酸 (P=0.02)、フェルラ酸 (P=0.02)、およびカフェ酸 (P=0.03)濃 度と結腸がんリスクとの間に負の関連が認められ、3-ヒドロキシ安息香酸濃度については結腸がんリスクと正の関連が認められた (P=0.03)。男女別に解析を行ったところ、女性では、カフェ酸、フェルラ酸濃度と結腸がんリスクとの間に負の関連が認められた。一方、男性においては、ジヒドロカフェ酸濃度と結腸がんリスクとの間に負の関連、3,5-ジヒドロキシフェニルプロパン酸、没食子酸、エピガロカテキン、3-ヒドロキシ安息香酸、エピカテキン濃度が高いほど、結腸がんリスクが高くなる傾向が認められた。

【結論】

お茶およびコーヒーに多く含まれるポリフェノールについて、1年間を通じて良好な再現性が認められた。また、主にコーヒーに多く含まれる、ジヒドロカフェ酸、フェルラ酸、カフェ酸濃度と結腸がんのリスクとの間に負の関連が認められたことから、これらのポリフェノールが結腸がんを予防する可能性が示唆された。

【倫理的配慮】

国立がん研究センターの倫理審査委員会および国際がん研究機関 (IARC)の倫理審査委員会の承認を得て実施した。

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