日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第10回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: YOS-23-2
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予防OS23
循環器疾患と呼吸サルコペニア
森沢 知之菊地 佑太齊藤 正和高橋 哲也
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抄録

【はじめに】

近年、関連する4学会が合同で作成した「呼吸サルコペニア」のポジションペーパーが発表された。呼吸サルコペニアに関する定義や診断方法がまとめられており、今後、呼吸サルコペニアの病態解明や予後・健康アウトカムとの関連の解析が進むものと期待される。地域高齢者117名 (平均年齢 76.7歳)を対象とした我々の調査において、呼吸筋力低下 (呼吸筋力が基準値以下)+サルコペニア群はロバスト群や単に呼吸筋力が低下している群と比較して、身体機能、ADLや生活機能が低い特徴を明らかにしたが、各疾患における呼吸サルコペニアの保有率やその臨床的特徴については不明な点が多い。 循環器領域でも心疾患患者を対象とした呼吸筋力の低下や萎縮に関する議論が高まっている。心不全患者の30-50%に呼吸筋力低下が生じていることや、本邦においては高齢心不全患者の横隔膜機能低下の発生率は約40%であり、サルコペニアやダイナぺニアと関連することなどが報告されている。心不全患者の呼吸筋力やサルコペニアの解明が進む一方で、心臓血管外科患者の術前の呼吸サルコペニアの有無が、術後の身体機能や運動耐容能の回復に及ぼす影響については明らかではない。

【目的と方法】

本検討の目的は心臓血管外科患者における術前の呼吸サルコペニア (“probable”と“possible”を含む)の有無が術後の回復に及ぼす影響を明らかにすることである。対象は順天堂大学医学部附属順天堂医院に手術目的で入院した待機的心臓血管外科患者46名である。術前の呼吸筋力、骨格筋量、肺機能検査より呼吸サルコペニアを判定し、術前の呼吸サルコペニアの有無が術後の回復に及ぼす影響を群間比較した。

【結果】

術前の呼吸サルコペニアの割合は50% (23名)であった。非呼吸サルコペニア群との比較では身体機能 (Short Physical Performance Battery、歩行速度)の回復率や術後の在院日数に有意差は認められなかったものの、呼吸サルコペニア群は有意に運動耐容能 (6分間歩行距離)の回復率が低かった。

【考察】

術前の呼吸サルコペニアは心臓血管外科手術後の身体機能や術後の経過には影響はないものの、運動耐容能の回復に関連する可能性がある。

【倫理的配慮】

本研究において実施した調査は全て順天堂大学医学部附属順天堂医院病院倫理委員会で承認されている (20-283)。また対象者には本研究に関して書面と口頭によるインフォームドコンセントを実施し、ヘルシンキ宣言に基づく倫理的配慮を十分に行った。

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