主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに,目的】
歩行能力は行動範囲を規定し,種々の身体機能と関連する.歩行自立判定には複数の評価指標による判断基準が必要とされており,療法士にとって自立可否を予測する知見は重要である.本研究では,臨床評価を特徴量に,高齢者施設内にて独歩・杖歩行自立可否を予測する機械学習モデルを構築し,3D partial dependence plot(以下pdp)やSHAPpdpから結果を解釈した.また,重要度の高い2つの特徴量を複合変数に変換し,複数の評価指標が歩行自立予測の寄与度を向上させるのか確認した.
【方法】
対象はR4年4月~R6年5月に施設のデイケア・短期入所・一般入所サービスを利用した高齢者78名(年齢:86.1±7.3 歳,BMI:21.7±4.2kg/m2,女性:49名,要介護度中央値:要介護 2)とした.なお,重度な神経学的疾患や急性疾患,荷重痛を有する者,装具着用者,認知症状が著明な者は除外した.歩行自立基準は日常的に独歩・杖歩行を行う者とした(BI歩行,FIM歩行/車椅子でも判断)(自立=1,35名).特徴量はvifと交絡因子を考慮し,年齢,性別,FIMセルフケア合計点,握力/体重,等尺性膝伸展筋力/体重,努力歩行速度,相対的立ち上がりパワー(0.9×g× (身長×0.5-椅子高)/30s×n of re-p1×s 0.5)とした.
解析はランダムフォレストを使用し,内的検証を行った.また,寄与度の高い特徴量2つを傾向スコアで複合変数に変換し,単 一の特徴量と比較した.解析にはR ver.3.6.3,Python3.8を使用した.
【結果】
モデルの判別指標精度はAUC88.7%,感度87.5%,特異度96.0%,交差検証AUC88.6%であり,努力歩行速度,相対的立ち上がりパワーは歩行自立への寄与度が高かった(主疾患バイナリ投入でも上位).3D・SHAPpdpでは努力歩行速度 1.0m/s,相対的立ち上がりパワー2.0W/kg付近から寄与度が向上する傾向であり,以上2つの特徴量を複合変数とした.複合変数を用いたROC曲線AUC,SHAP寄与度を単一の特徴量と比較すると,複合変数が高い値となった(単一AUC90.0-92.0%,複合変数AUC93.2%,単一寄与度0.2~0.3,複合変数寄与度0.4~0.5).
【考察】
機械学習3D・SHAPpdp,複合変数投入を用いて,歩 行自立に関する特徴量の寄与度を分析した結果,努力歩行速度,相対的立ち上がりパワーは判定材料としての重要性を示した.複合変数の比較から,2つの評価を合わせて実施する事は,単一の評価より,理学療法士の歩行自立可否の判断をサポートできる可能性がある.
【倫理的配慮】
本研究は,対象者に書面と口頭にて説明を行い,同意を得た.また,高知県健康科学大学研究倫理委員会の承認 を受けた.