日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 02
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口述1
外来通院高齢者における総合事業対象者の実態
~基本チェックリストによる調査から~
*岩﨑 孝俊上原 七帆小林 琢倉田 裕子横山 千裕
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抄録

【はじめに、目的】

介護予防・日常生活支援総合事業 (総合事業)は2017 年 から全国の市町村で開始され、事業対象者と要支援1・2の方にサービスが提供される。事業対象者は市町村の相談窓口や地域包括支援センターに相談し、基本チェックリスト (KCL)の結果に基づき選定される。

国内の大規模調査では、事業対象者は高齢者全体の9.3%に該当したが、我々は外来通院中の高齢者は事業対象者の割合がさらに多いと推測し、本研究は、KCLを用いて外来通院高齢者の事業対象者の実態を明らかにすることを目的とする。

【方法】

医師の依頼により、生活習慣病を有する65歳以上の外来患者 1467例に対して、理学療法士による運動・生活評価および指導を実施。評価項目は、KCL、生活習慣、運動への意識、身体組成、運動機能 (握力、片脚立位保持時間、30秒立ち座りテスト)で構成された。

KCLの結果に基づき、「事業対象者」と「非該当者」に分類し、各群の評価項目を比較。さらに、事業対象者を従属変数、両群間で有意な差が認められた項目を独立変数としてロジスティック回帰分析を行った。なお、介護保険利用者は本研究から除外した。

【結果】

介護保険利用61例とデータ欠損17例を除外し、1389例 (事業対象者:772例 (55.6%)を対象とした。疾患の内訳は心疾患 1047例、糖尿病305例、高血圧827例、脂質異常症794例であった (複数回答)。プレフレイルに487例 (35.0%) 、フレイルに 210例 (15.1%)が該当した。

事業対象者の特徴は高齢、運動習慣の欠如、日中TV視聴時間の長さ、外出頻度の低さであった。また、体力に自信がなく、運動不足を自覚していることが多かった。全ての運動機能で低値が認められ、BMIやSMIは低く体脂肪率は高かった。

ロジスティック回帰分析の結果、年齢、日中TV視聴時間、30秒立ち座りテスト、握力、体力の自信、外出頻度が抽出された。

【考察】

生活習慣病を保有する高齢者は事業対象者の割合が多いことが示唆された。高齢者の中には、外来通院が可能な状態から運動機能の変化や生活行為に課題を抱える例が多く、運動機能向上の助言に留まらず、個別の生活行為を評価し、支援を構築することが重要と考えられる。

事業対象者は市町村の相談窓口や地域包括支援センターに相談して認定されるが、定期的な通院やフォローアップ通院の高齢者に対して、理学療法士が関わることで「些細な衰え」を早期に発見できる可能性が示唆された。

【倫理的配慮】

みなみ野循環器病院倫理審査委員会の承認を得て実施した承認番号:MJ-070

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