日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 10
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口述 2
高齢心血管疾患患者における退院後のうつ症状の改善と再入院との関連
*横手 翼西村 天利大淵 雅子西 淳一郎
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抄録

【目的】

本研究の目的は、高齢心血管疾患患者において、退院後のうつ症状の変化が再入院に対して影響するのかを調査することである。

【方法】

本研究は後ろ向き縦断研究である。当院に心疾患で入院し退院後、外来心臓リハビリテーション (以下、リハ)に通院を継続している65歳以上の者を対象とした。再入院は、退院後1年間の心血管疾患による治療を要する入院と定義した。うつ症状は、退院前日および外来心リハ終了時にPatient Health Questionnaire-9を用いて評価し、維持・悪化群と改善群に分類した。うつ症状の変化2群における再入院率の差はカプランマイヤー曲線を作成しログランク検定を用いて解析した。うつ症状の変化と再入院との関連はCox比例ハザードモデルによって解析した。調整因子は年齢、性別、体格指数、認知機能、疾患の種類、退院前の腎機能、通院期間、退院後の運動習慣の有無とした。

【結果】

退院時のうつ症状が0点であった例を除外し、最終解析対象者は98名 (平均年齢74.4±5.9歳、女性31名)であった。維持・悪化群は34名 (34.7%)、改善群は64名 (65.3%)であった。再入院の割合は維持・悪化群が11名 (32.4%)、改善群が14名(21.9%)であった。うつ症状改善の有無において、強心薬投与日数、呼吸器装着日数、退院時血清アルブミン値、退院時握力、退院後の握力改善率、退院後の運動頻度に有意差がみられた。Cox比例ハザードモデルでは、維持・悪化群と比較して改善群における再入院のハザード比は0.41 (95%信頼区間:0.16-0.90)であり、調整後のハザード比は0.30 (95%信頼区間:0.11-0.87)であった。

【考察】

うつ症状は自律神経異常を引き起こし、心血管疾患の発症に影 響することが先行研究によって報告されている。さらに退院後にうつ症状が改善しない者は、疾患自体が重症であること、低栄養かつ運動頻度が少なさにより身体機能の改善が乏しいこと、などによって再入院リスクを高めたと考えられる。したがって、うつ症状が改善しない場合は、より専門的な介入が必要である可能性がある。今後は外来心リハ期間におけるうつ症状の改善を一つの目標とし、うつ症状が改善しない患者に対する対策の検討が必要である。

【倫理的配慮】

研究に関する情報および説明と同意は、厚生労 働省のガイドラインに基づき、当院のホームページで公開され、当院の倫理委員会の承認を受けた (承認番号:20126)。

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