主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに、目的】
急性期におけるリハビリテーション治療の新しい取り組みとして、我々は心拍変動(HRV; Heart Rate Variability)に注目しており、自律神経系の変化をリハビリテーション治療効果判定の一つとして用いている。今回、当院における実際の取り組みについて報告する。
【方法】
対象は、当院に入院しリハビリテーションを処方された患者群。簡易型HRV測定器を用いてHRVを測定し、周波数解析を行う。 周波数解析は自己回帰法と高速フーリエ変換法の解析によって、自律神経系のバランスをグラフと数値で表示できる。リハビリテーション開始日に1回目 (ベースライン)を測定し、通常のリ ハビリテーションを行った上で、7~14日後に2回目を測定する。主にTP (total power; 自律神経系の全体パワー)、VLF(very low frequency; 交感神経系の指標)、HF(high frequency;副交感神経系の指標)、LF/HF比 (高ければ交感神経優位、低ければ副交感神経優位と見なす)のベースラインからの変化を捉え、自律神経系の変化を評価する。
【結果】
症例1:70代男性。閉塞性動脈硬化症。1回目(Day1)はTP157、VLF80、HF50、LF/HF比0.52。2回目 (Day11)はTP640、VLF584、HF9、LF/HF比4.60。症例2:70代男性。混合性結合組織病。1回目(Day1)はTP185、VLF71、HF44、LF/HF比1.57。2回目 (Day11)はTP103、VLF69、HF13、LF/HF比1.49。
【考察】
症例1は、心疾患・動脈硬化系の典型例である。ベースラインでは全体のパワーは弱めで、LF/HF比から副交感神経優位状態である。2回目の測定では1回目に比べて全体としてのパワーは増加し、交感神経系が強化されている。症例2は、がんや膠原病など全身消耗状態の典型例である。ベースラインでは全体のパワーは弱めで、LF/HF比からやや交感神経優位状態である。 2回目の測定では全体のパワー、交感神経系、副交感神経系はむしろ低下している。HRV測定は、疾病からの回復過程における自律神経系の働きを可視化することで、転帰先やリハビリテーション内容の検討、運動負荷量の調整が適切な時期に行え、活動量の調整およびADLの低下予防、ヘルスプロモーションとしての役割が期待される。
【倫理的配慮】
ヘルシンキ宣言に基づき対象者の保護に十分留意した。対象者に説明を行い、同意を得た。本研究は、旭川医科大学倫理委員会の承認を得て実施した (承認番号17021)。