主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに】
医療・介護現場で働く職員の人手不足は深刻であるが、腰痛は離職に繋がる原因の一つであり労働生産性にも大きく影響する事象である。当院の衛生委員会では、平成27年度より腰痛対策チームによる職員の腰痛予防に向けた取り組みを行っている。今回、5年分の取り組みについてまとめ、年度ごとの腰痛罹患率を調査した。
【方法】
調査期間は令和元年5月~令和5年3月までとし、職員の腰痛罹患率について各年度末にアンケートを実施した。
腰痛対策チームは、理学療法士、介護主任2名で構成され、月 1回のミーティングで対策を協議し多部門が参加する衛生委員会で報告した。
取り組み内容は、令和元年は負担が多い作業についてのラウンド、就業前に行う腰痛体操の見直し、令和2年度は厚労省の腰痛予防対策チェックの結果を踏まえて病棟毎の要因や対策を検討、部屋にあるチェスト撤去による作業環境の改善、令和3年度はスライドボード普及の取り組みとラウンド、令和4年度は腰痛がある職員のメディカルチェック、令和5年度は希望者全員のメディカルチェックと、その後の研修会によるフォロー (全8回)を実施した。令和4年度以外は毎年度腰痛に関する研修会を実施。その他、マッスルスーツや立位補助機のデモなど福祉用具の導入も検討した。
【結果】
腰痛罹患率は、令和元年55% (看護57%、介護71%、他44%)、令和2年度49% (看護51%、介護67%、他30%)、令和3年度48% (看護46%、介護62%、他37%)、令和4年度53% (看護60%、介護73%、他35%)、令和5年度48% (看護50%、介護62%、他 38%)であった。
【考察】
令和2年度までに腰痛リスクの高い項目の洗い出しとチェスト撤去により作業スペースが確保されたことで、令和3年度のスライドボード普及について促進が進み、これまで抱え上げを主としていたストレッチャー移乗について対策を講じることが出来た。一方、令和4年度に実施したメディカルチェックについては継続的なフォローがなかったこともあり業務に直接結びつきづらい点が罹患率に影響した可能性がある。令和5年度において結果を元に、移乗やオムツ交換など作業姿勢についてのフォロー研修を行い、具体的な対策を講じたことで一定の成果を上げることができたものと思われる。一方、腰痛体操の普及に関しては看護、介護職以外の実施には至っていない。今後は、病棟職員以外の取り組みも検討していきたい。
【倫理的配慮】
本研究は、当院倫理委員会の承認を得ている。また、アンケートは匿名とし個人を特定できる質問は除外するとともに、研究内容については当院衛生委員会で各部門より了承を得ている。