日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 25
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口述 4
身体活動指針の提示が日本人成人の知識・信念・意図・行動の変容に及ぼす影響:無作為化比較試験
*田島 敬之原田 和弘齋藤 義信武田 典子小熊 祐子
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抄録

【背景】

国民の身体活動実践を支援するツールとして,厚生労働省が2013年に策定した「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」(現指針)があり,現在は新指針へ改訂作業中である.これらの指針の認知し,理解することは,身体活動の信念や行動意図を介して身体活動の促進に寄与できる可能性がある.ただしこの仮説は横断的検討に留まり,因果関係が明確でない.本研究では,指針の提示が知識,信念,行動意図,身体活動量に及ぼす影響を検証した.

【方法】

社会調査会社の登録モニターを無作為抽出し,適格基 準(20歳~64歳の男女,現指針の認知がなく身体活動制限のな い者)を満たす1333名を対象とした.介入前(T1)調査では,指針の知識,身体活動の信念,行動意図,身体活動量,ヘルスリテラシー,個人属性をオンライン上で調査した.その後,現指針提示群,新指針案提示群(厚労科研研究班案),食事バランスガイド提示群(対照群)に無作為割付し,提示資料の熟読を求めた.介入直後(T2)と1週間後(T3)調査では,知識,信念,行動意図をオンライン上で再調査し,T3時点は身体活動量も調査した.統計解析は,知識,信念,行動意図,身体活動量をアウトカムとし,提示群,時点,提示群×時点の交互作用項,ならびに調整変数に個人属性を投入した線形混合モデルを実施した.さらに指針の提示が知識の変容を媒介して,信念,行動意図,身体活動量の変容に影響を及ぼすか共分散構造分析で検討した.

【結果】

現指針提示群は対照群よりT2時点の知識と行動意図, T3時点の知識と余暇身体活動時間が有意に高かった.加えて知識の変容は,信念,行動意図,身体活動の変容をもたらしたが,知識,信念の変容に及ぼす影響は,ヘルスリテラシーが低い群 で顕著であった.一方,新指針案提示群は対照群よりT2時点の知識が有意に高かったが,知識の変容と信念,行動意図,身体活動の変容との関係は明確でなかった.

【結論】

現指針の提示は,知識,信念,行動意図の変容を介し て身体活動の促進に寄与できる可能性がある.ただしヘルスリテラシーが知識,信念の変容に修飾作用を及ぼす可能性があり,指針を活用した身体活動介入ではこの点に留意が必要かもしれない.一方で新指針案の提示は,介入直後の知識の向上に寄与するに留まった.本研究で用いた新指針案は最終版ではないため,さらなる改良を経て行動変容の促進に寄与できる指針となることが期待される.

【倫理的配慮】

本研究は,神戸大学大学院人間発達環境学研究科倫理審査委員会の承認を得て実施した (承認番号:709).インターネットによるアンケート調査の最初のページ (Web 画面)で,本研究の説明した画面を提示し,内容を十分理解した上で研究参加に同意が得られる場合のみ,次ページ以降のアンケート画面に進むよう教示した.

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