日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第11回 日本予防理学療法学会学術大会
セッションID: O - 36
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口述 6
地域在住高齢者における経済状況と趣味・生きがいによる主観的幸福感への関連
*徳永 瑞樹北森 太樹松沢 良太畑山 浩志永井 宏達
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抄録

【はじめに、目的】

主観的幸福感とは、その人の人生全体の様々な要素に関する認 知的評価であり、感情的な経験も含まれるQOLの主観的な要素の一つである。 主観的幸福感は様々な要因と関連しており、 なかでも 経済状況の悪化は主観的幸福感の低下に密接に関与していることが報告されている。また、 近年では趣味活動を含む生きがいが主観的幸福感に関与することが報告されており、これらは経済状況と主観的幸福感の関連性を干渉する可能性がある。しかし、経済状況と主観的幸福感の正の関連を趣味・生きがいがどのように修飾するかは明らかでない。 本研究では、高齢者の経済状況と趣味・生きがいによる主観的幸福感への関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】

本研究は、洲本市の5つの圏域のうち2圏域に住む高齢者を対象とした悉皆調査 (6128名)に基づく横断研究である。本研究では主観的幸福感、経済状況、趣味・生きがいを評価項目とした。 主観的幸福感の評価方法としては、介護予防・日常生活 圏域ニーズ調査に用いられる10点法を採用した。経済状況は、同調査に用いられる6段階のリッカート尺度にて評価した。 趣味・生きがいは、同調査に用いられる2択の質問にて評価した。統計解析は、経済状況と趣味・生きがい、主観的幸福感に関する記述統計を行った。 また、従属変数を主観的幸福感、経済状況と趣味・生きがい、経済状況 趣味・生きがいの交互作用項を独立変数とした一般線型モデルによる分析を行った。共変量として年齢、性別、独居、身長、体重、フレイル、併存疾患を投入した。 有意確率は5%未満とした。

【結果】

返答のあった2406名 (回収率39.3%)からデータ欠損のあるものを除外し、解析対象者は1724名となった。一般線型モデルによる分析の結果、経済状況 (p < 0.001、偏η2=0.10)と趣味・生きがい (p < 0.001、偏η2=0.01)は主観的幸福感に有意に関連していた。 同モデルにおいて、経済状況と趣味・生きがいによる有意な交互作用が確認され、経済的に苦しい人ほど、趣味・生きがいを持つことが高い主観的幸福感に関連していた (p = 0.031、偏η2=0.01)。

【考察】

経済状況と趣味・生きがいはそれぞれ独立して主観的幸福感に関連していた。 また、経済的に苦しい人ほど、趣味・生きがいを持つことで、主観的幸福感の低下を抑制できる可能性が明らかとなった。

【倫理的配慮】

研究の趣旨を書面にて説明し、調査票の返送をもって同意を得たものとした。本研究は兵庫医科大学倫理審査委員会 (承認番号 第4103号 202303-189)の承認を受けて実施した。

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