主催: (一社)日本予防理学療法学会、(一社)日本理学療法学会連合, 第59回 日本理学療法学術大会
会議名: 第11回 日本予防理学療法学会学術大会
回次: 1
開催地: 仙台大学(宮城県柴田郡柴田町)
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに、目的】
我々は、新型コロナウイルス感染症 (以下、 COVID-19)拡大下での地域在住高齢者の健康に関する調査を継続している (以下、高崎調査)。今回、COVID-19対策期間中に 介護保険認定に移行した地域在住高齢者の特性を調査することで、新たな知見を得ることを目的とした。
【方法】
2021年5月から実施した高崎調査 (以下、ベースライ ン)のデータを用いた。1815名の地域在住高齢者に対して自己記入式の質問紙調査を送付して、942名から回答を得た。また、 2023年5月からフォローアップ調査 (以下、フォローアップ)を実施して、フォローアップまで追跡が可能であった330名を対象とした。ベースラインの時点で介護保険認定を受けていた88名を除外したうえで、欠損値は多重代入法にて補完を行った。介護保険認定に移行する予測因子として、ベースラインの年齢、性別、併存疾患、家族との同居、転倒歴、簡易フレイルインデックス、生活変化の質問票 (以下、QCL)を調査した。QCLは運動量、下肢筋力、食事量、コミュニケーション機会、不安の5項目で構成されている。さらに、フォローアップにおける介護保険認定 (要支援・要介護)の有無 (以下、アウトカム)を評価した。そのうえで、ロジスティック回帰モデルを構築した。
【結果】
介護保険認定群 (n=25)と自立群 (n=217)の群間比較の結果、年齢とQCL (下肢の弱りの自覚)に有意差が認められた。アウトカムを目的変数、有意差が認められた2項目を説明変数 として強制投入した二項ロジスティック回帰分析を行った。その結果は、年齢OR1.15(95%CI:1.06-1.25)、QCL (下肢の弱りの自覚)OR2.32(95%CI:1.24-4.36)であった。
【考察】
COVID-19拡大下では、地域での介護予防活動の縮小・中止が余儀なくされた。このような状況下でも、地域在住高齢者の年齢や下肢の弱りの自覚に留意し、予防に視座を置いた方策が望まれる。要支援・要介護区分ごとの解析でないという課題は否めないが、今回の知見は、新たな感染症危機の際にも援用できるかもしれない。
【倫理的配慮】
本研究はヘルシンキ宣言を遵守して計画され、高崎健康福祉大学研究倫理委員会審査会の承認を得た (許可番号2009号、2259号)。研究参加の同意取得は質問紙への氏名の記載をもって行った。